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日本の研究者のための英語論文の伝え方④英文校正の限界と本当の使いどころ

  • 15 時間前
  • 読了時間: 3分

英文校正を使っているのに、査読者から「論旨が不明確」「この研究の貢献がわからない」と言われた。そんな経験をお持ちの方は少なくないと思います。校正後の論文でこうしたコメントが返ってくるとき、何が起きているのでしょうか。


英文校正は、論文の「言語の問題」を直す手段です。しかし論文が伝わらない原因は、言語の問題だけではありません。今回は校正が直せるものと直せないものを整理したうえで、効果的な使い方を説明します。


英文校正が直せるもの


校正サービスが力を発揮するのは、たとえば文法・スペル・句読点のミス、不自然な言い回しや語彙の選択、文レベルの読みにくさ、ジャーナルの投稿規定に沿った表記の調整などです。


本シリーズ第1回で「層① 言語の問題(表層):言語の問題は最も対処しやすい」と触れましたが、校正はまさにこの層に対応する手段です。


英文校正が直せないもの


一方、校正では対応できない問題があります。


  • 論文全体の構成(何をどの順序で言うか)

  • 各セクションの役割(Introductionで何を示すべきか)

  • 研究の位置づけ(先行研究との関係や貢献の明示)

  • 主張の強度(「示唆される」を"demonstrate"にすべきかどうかの判断)

  • 読者が「これは自分に関係ある研究だ」と感じるかどうか


これらは校正では直せません。


どれだけ丁寧に校正しても、ここは書き手が設計しなければならない領域です。この区別が意識されないまま校正が使われていることが多いのですが、それが「校正したのに伝わらない」という状況を生みます。


なぜ研究者はこの限界に気づきにくいのか


校正後の論文は、見た目が大きく変わります。文章が整い、読みやすくなった実感があります。この「改善の実感」が、構造の問題が残っていることへの気づきを遅らせます。


「文章が整った」ことと「主張が伝わる」ことは別の話です。しかし校正前後の変化は目に見えやすく、構造の問題は目に見えにくい。そのため、査読コメントで初めて「論旨が不明確」と指摘されて気づく、というケースが少なくありません。


校正者は文体の専門家ですが、研究の意図や文脈の専門家ではありません。書き手が何を主張したいのか、どの読者に向けて書いているのかを、校正者は判断できない立場にいます。校正後の変更がすべて正しいわけではなく、主張の強度や読者への訴求に関わる変更は、書き手が最終的に判断する必要があります。


校正をどう使うか


校正に出す前に、構造と主張の設計を自分で終わらせておくことが前提です。そのうえで、以下の点を意識すると校正の効果が上がります。


まず投稿前に、主張が適切な位置に出ているかを確認します。Abstractの1文目が結論になっているか、Introductionの冒頭でgapと目的が示されているかー第3回で触れた確認項目を、校正に出す前に自分でチェックしておくということです。


次に、校正者へのインストラクションを丁寧に伝えます。投稿先ジャーナル、想定する読者層、特に見てほしい箇所を具体的に伝えると、返ってくる修正の精度が上がります。


そして校正後の変更は、盲目的に受け入れないことです。意図と異なる変更は戻してかまいません。校正者の提案は参考にしながら、最終的な判断は書き手が行います。


まとめ


英文校正は「言語の問題」を解決する有効な手段ですが、「構造・文脈の問題」には届きません。校正で文章が整うことと、論文が伝わることは別の話です。


校正の前に設計を終わらせる。この順序を意識するだけで、校正が本来の力を発揮するようになります。


次回は「『新規性がない』と言われるときに起きていること」を取り上げます。査読で最も多いコメントのひとつを、構造の問題として読み解いていきます。

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