研究者のための研究発信ガイド⑥研究成果をオンラインでどう届けるのか~ X・LinkedIn・ResearchGateの使い分け
- 7月30日
- 読了時間: 9分

論文が公開された後、XやLinkedInで知らせようと思っても、何を書けばよいのか、どのサービスを使えばよいのか迷うことがあります。
論文タイトルとリンクだけを投稿しても、読み手には、その研究が自分とどう関係するのかが分かりません。一方で、複数のサービスを使い、それぞれに異なる文章を用意するのは負担がかかります。
研究成果をオンラインで届けるときは、誰に読んでほしいのかを先に決めます。相手によって、書くべきことも、研究を紹介する場所も変わります。
本記事では、投稿を通じて研究を知らせるXとLinkedInに加え、著者名や論文情報から研究成果を見つけてもらうResearchGateを取り上げます。
研究成果を置く場所と、知らせる場所は異なる
オンライン上で研究成果に関わる場所は、それぞれ異なる役割を持っています。
ジャーナルや機関リポジトリには、論文本文を読める形で置きます。researchmapなどには、研究者の経歴や業績を記録します。ResearchGateでは、著者名や研究テーマ、共著者などから論文を見つけてもらいます。XやLinkedInは、研究の存在を知らせ、その研究を読む理由を伝えるために使います。
XやLinkedInで論文を知らせても、リンク先で本文を読めなければ、読み手は研究の詳細まで進めません。投稿する前に、リンク先で本文を読めるかを確認します。
researchmapは、科学技術振興機構が運営する国内の研究者情報基盤です。研究者情報を公開するほか、論文、講演、研究課題などを業績として蓄積します。個々の研究について投稿を流すXやLinkedInとは用途が異なります。
論文の公開状態を確認したうえで、オンラインで知らせます。researchmapなどの業績情報は、投稿とは別に、著者名から研究を探す人のために整えます。
想定する読者によって何が変わるか
同じ論文でも、想定する読者によって伝えるべき情報は変わります。
同じ分野の研究者に向けるなら、その研究で新たに分かったことや、方法上の特徴が関心の中心になります。隣接分野の研究者には、その人の研究とどこで接続するのかを示します。
企業、行政、医療、教育などに携わる実務家へ届けたい場合は、専門的な方法の詳細より、研究がどのような現実の課題を扱っているのかを先に示します。著者名や研究テーマから論文を探す研究者に対しては、正確な書誌情報とDOIを示します。
誰に読んでほしいのかが曖昧なままでは、投稿内容も曖昧になります。「この論文を、どのような関心を持つ人に読んでほしいのか」まで考えると、何を書くべきかが見えてきます。
届けたい相手に合わせて言語を選ぶ
英語論文を紹介する場合でも、オンラインでの発信まで必ず英語にする必要はありません。
海外の同分野研究者へ届けるなら、英語で研究の問いと主要な結果を示します。国内の研究者や実務家に読んでもらいたい場合は、日本語で研究背景や日本の課題との関係を補います。
国内外の双方へ届けたいときは、日本語と英語で投稿を分けます。英語で研究の要点を示し、日本語で背景や国内での意味を加える方法もあります。
一つの投稿に二言語の文章をすべて入れると、どちらの読者にとっても長くなります。説明量が多い場合は、投稿を分けます。
投稿言語は、論文が何語で書かれているかではなく、誰に読んでほしいかに合わせて選びます。
Xの使いどころ
Xは、論文が公開された直後や学会の開催中など、その時点で知らせる意味が大きい情報に向いています。
新しい論文の公開を告知するほか、学会名や研究テーマに関する投稿の流れの中で、関連する研究成果を紹介できます。グラフィカルアブストラクトや主要な図を添えれば、文章だけの場合よりも研究内容を短時間で捉えてもらいやすくなります。
他の研究者の投稿へ返信する際に自分の論文を紹介する場合は、相手の議論と直接関係していることが前提です。関連が薄い論文のリンクを突然載せると、研究上の情報提供ではなく、自己宣伝として受け取られます。
研究者がどのオンラインサービスを使っているかは、分野によって異なります。まず同分野の研究者や学会のアカウントを検索し、研究に関する情報交換が実際に行われているかを確認します。
投稿では、論文タイトルとリンクに加え、「何を調べたのか」と「主に何が分かったのか」を短く示します。
次の投稿だけでは、その論文を読む理由が伝わりません。
「新しい論文が公開されました。ぜひお読みください」
研究内容を加えると、読者は自分の関心と照らし合わせられます。
「都市部の高齢者を対象に、夏季の外出行動と暑熱環境の関係を調べました。日中の気温だけでなく、移動経路の選択も外出時間と関係していました」
画像を載せる際は、図中の文字や研究の要点を代替テキストにも記載します。Xでは、投稿画像ごとに説明を追加できます。画像内の文章を要約し、グラフや図が何を示しているのかを書けば、画像を視認できない利用者にも内容が伝わります。
LinkedInにも、投稿画像へ代替テキストを追加する機能があります。グラフィカルアブストラクトを投稿するときは、媒体を問わず画像だけに情報を依存させないようにします。
LinkedInで背景を伝える
LinkedInでは、研究結果だけでなく、なぜその研究に取り組んだのか、誰とどのように進めたのか、専門外の人にとってどのような意味があるのかまで書けます。
要旨をそのまま貼り付けるより、次のような背景を補うと、異分野の研究者や実務家にも伝わりやすくなります。
なぜこの問題を調べたのか
どのような共同研究から生まれたのか
どの分野や立場の人に読んでほしいのか
今回の結果が、どの課題を考える材料になるのか
たとえば医療分野の論文であれば、同分野の研究者には研究方法や新規性が注目される一方、行政や企業の担当者には、その結果が現場のどの問題に関係するのかが重要になります。
社会的な意義を書く際には、論文で確認した結果と、今後期待される応用を区別します。研究で検証していない効果を、すでに得られた成果のように見せないよう注意します。
LinkedInの利用状況も、分野や業界によって異なります。国内の研究者や実務家へ届けたい場合は、自分が想定する読者がLinkedIn上で発信や閲覧をしているかを先に確認します。投稿できても、読む人がいるとは限りません。
ResearchGateで見つけてもらう
ResearchGateでは、投稿を一時的に広めることより、著者名、論文名、DOI、研究テーマ、共著者などを手掛かりに、後から研究成果を見つけてもらうための情報を整えます。
まず、自分の論文に著者として正しくひも付いているか、論文名やDOIなどの書誌情報に誤りがないかを確認します。共著者や関連研究からも論文をたどれるため、個別の投稿を見ていない研究者に発見される可能性が生まれます。
ResearchGateは、研究成果を検索エンジンから見つけてもらいやすくするためのSEO対策も案内しています。ResearchGateを利用していない研究者が、著者名や論文名の検索から出版物ページへ進むこともあります。
researchmapとResearchGateは、役割が異なります。researchmapでは、国内の研究者情報基盤に業績を蓄積します。ResearchGateでは、海外を含む研究者が検索、研究テーマ、共著者などを手掛かりに論文を発見する入り口を増やします。
書誌情報を登録することと、全文ファイルをアップロードすることは切り分けて考えます。
共有できる版は、論文に付されたライセンスや出版社との契約、ジャーナルの方針によって決まります。
CC BYなどのオープンライセンスで公開された論文は、出典表示などのライセンス条件を守れば、出版社版をそのまま共有できます。CC BY 4.0では、適切なクレジットとライセンスへのリンクを示し、変更した場合はその旨を明記することが求められます。
購読誌に掲載された論文では、共有できる版が著者最終稿などに限られることがあります。
ResearchGateにアップロード機能が表示されていても、そのファイルを公開する権利が自動的に認められるわけではありません。ResearchGateも、共有前に出版社の方針や著作権契約を確認するよう案内しています。
出版社やジャーナルのセルフアーカイビング方針は、公式ページやJiscのOpen Policy Finderで調べられます。判断が付かない場合は、所属機関の図書館や研究支援部門へ相談します。
まず一つから始める
最初からX、LinkedIn、ResearchGateをすべて使う必要はありません。
候補を選ぶ際には、次の点を確認します。
想定する読者が実際に利用しているか
共著者や同分野の研究者はどこで情報を得ているか
自分が無理なく投稿や更新を続けられるか
自分の目的と、そのサービスの使われ方が合っているか
まず一つを選び、論文の公開時に無理なく投稿や更新ができる範囲で始めます。研究者がほとんどいないサービスで投稿を続けたり、使い慣れない複数のサービスを同時に管理したりすれば、負担ばかりが増えます。
複数の媒体を使う段階になっても、毎回まったく異なる文章を最初から作る必要はありません。
研究の問い、主要な結果、想定する読者、DOI、グラフィカルアブストラクトなどを共通素材として用意します。そこから、Xでは公開直後に伝えたい要点を短く示し、LinkedInでは背景を補います。ResearchGateでは書誌情報と全文の共有条件を整えます。
同じ文章をそのまま複製するのではなく、その場所にいる人が論文を読む理由に合わせて、最初の説明と情報量を変えます。
数字をどう読むか
多くのオンラインサービスでは、表示回数、反応数、共有数、閲覧数などが示されます。しかし、これらの数字から研究の学術的な質を判断することはできません。
投稿が画面に表示されても、本文まで読まれたとは限りません。反応が少なくても、その研究を必要とする研究者や実務家に届いている可能性はあります。投稿直後の反応の大きさも、将来の引用や共同研究への発展を予測するものではありません。
投稿への反応と、リンク先の閲覧や論文本文の読了は分けて考えます。
反応の数字は、投稿の成否を判定するためではなく、どの説明や画像が読者に理解されやすかったかを考える材料として使います。論文ページへのアクセス、研究者からの問い合わせ、学会での会話なども含めて確認すると、研究がどのように届いたのかを判断しやすくなります。
誰に届けるかを起点にする
研究成果を公開する場所、業績を記録する場所、見つけてもらう場所、研究の存在を知らせる場所は、それぞれ目的が異なります。
どの場所を使う場合でも、先に決めるのは誰に読んでほしいかです。相手が変われば、選ぶサービス、投稿する言語、補うべき背景も変わります。
同じ論文でも、公開直後に短く知らせる場面と、後から著者名や研究テーマで見つけてもらう場面では、用意すべき情報が違います。前者では研究の要点と読む理由を示し、後者では正確な書誌情報と本文へのアクセスを整えます。
多くの場所へ投稿すること自体を目的にせず、研究を必要とする人が成果の存在に気付き、論文本文まで進めるような発信を目指しましょう。


