研究者のための研究発信ガイド②「学術的な文章」と「短く伝える文章」は何が違うのか
- 1 日前
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研究内容について聞かれたとき、
「論文を読んでください」
だけでは済まない場面があります。
学会の休憩時間、共同研究の打診、研究費申請、研究者プロフィール、SNSなど、研究者は意外と頻繁に自分の研究を短く説明する機会に直面しています。
しかし論文執筆に慣れた研究者ほど、短く説明することに難しさを感じることがあります。
それはなぜでしょうか。
論文の目的は「正確に伝えること」
論文は学術コミュニティに向けた文書です。
重要なのは、研究内容を正確に記述することです。
背景、方法、結果、考察を積み上げ、他の研究者が内容を理解し、評価し、必要に応じて再現できるようにします。
そのため論文では、専門用語や詳細な説明が欠かせません。
また、読者も一定の専門知識を持っていることが前提になっています。
短く伝える文章の目的は「関心を持ってもらうこと」
前回の記事では、研究者は論文そのものではなく、自分の課題に対する答えを探していることを紹介しました。
そのとき最初に読まれるのは、必ずしも論文本文ではありません。
タイトルや要旨、研究者プロフィール、学会発表の概要、SNS投稿などを通じて、
「これは自分に関係がありそうだ」
と感じてもらって初めて論文にたどり着きます。
短く伝える文章の役割は、研究内容をすべて説明することではありません。
その研究に関心を持ってもらうことです。
研究成果を必要としている人に、「読んでみよう」と思ってもらうための入口を作ることが目的です。
研究内容を単純化する必要はない
研究発信という言葉に対して、
「専門性を犠牲にしてわかりやすくすることではないか」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際にはそうではありません。
必要なのは研究を単純化することではなく、研究への入口を作ることです。
論文本文には詳細な方法や結果、考察が記載されています。
それらを短い文章の中ですべて説明する必要はありません。
まずは研究の問いや意義を伝え、興味を持った人が論文へ進めるようにすることが重要です。
研究発信は論文を置き換えるものではありません。
論文へたどり着くきっかけを作るものです。
では、同じ研究でも説明の仕方がどのように変わるのか見てみましょう。
同じ研究でも説明の仕方は変わる
例えば、都市河川のマイクロプラスチックを調べた研究があるとします。
論文的な説明であれば、
「都市河川におけるマイクロプラスチック濃度と降雨イベントとの関連を解析した」
となるかもしれません。
一方で、短く伝える場合には、
「大雨の後に川のマイクロプラスチックが増えるのはなぜか。その仕組みを調べました」
という説明もできます。
どちらも同じ研究を指しています。
違うのは説明の順番です。
論文では研究内容を正確に記述することが優先されます。
一方、短く伝える文章では、読者が興味を持ちやすい問いから始めます。
研究内容を変えているのではなく、入口を変えているのです。
まとめ
学術論文と短く伝える文章は、優劣の関係ではありません。
目的が異なります。
論文は研究成果を正確に伝えるためのものです。短く伝える文章は、その研究を必要とする人に「これは自分に関係がある」と気付いてもらうためのものです。
研究発信では、論文を書く力に加えて、自分の研究の意義や問いを短く説明する力も重要になります。
次回は、なぜ研究者プロフィールが研究発信に影響するのかについて考えます。

