研究者のための論文出版ガイド⑤査読者はどのように選ばれるのか ~ピアレビューの裏側
- 2 日前
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これまでのシリーズでは、論文投稿から掲載までの流れ、査読の基本的な仕組み、査読コメントへの対応方法、Special Issueの仕組みなどを解説してきました。査読を経験すると、多くの研究者が次に疑問に思うのが「自分の論文はどのような研究者に読まれているのだろうか」という点ではないでしょうか。
著者の立場から見ると、査読は「匿名の誰かからコメントが届く仕組み」に見えるかもしれません。しかし実際には、編集者が論文の内容に近い専門分野の研究者を探し、研究の妥当性や新規性を評価してもらうための仕組みとして慎重に運営されています。本記事では、一般的な学術出版の仕組みに基づき、査読者がどのように選ばれるのか、その基本的な考え方と実務の流れを説明します。
査読者はどのように選ばれるのか
査読者は、投稿論文の研究分野に十分な専門性を持つ研究者の中から選ばれます。多くの場合、博士号を取得し、その分野で論文発表の実績を持つ研究者が候補になります。
査読者を選定する際には、主に次のような点が考慮されます。
投稿論文のテーマと専門分野が一致していること
当該分野で研究実績があること(論文発表など)
著者と利害関係がないこと(利益相反の回避)
査読者候補は、例えば関連分野の論文著者、学術データベースに掲載されている研究者、過去に査読を担当した研究者、編集委員会のネットワークなど、さまざまな情報源から見つけられます。投稿論文と近いテーマの研究を行っている研究者が候補になることが多く、同じ分野の専門家によって評価される仕組みになっています。
著者が査読者を提案する場合
MDPIジャーナルでは、投稿時に査読者候補を著者が提案できる仕組みがあります。
これは査読者を著者が決めるという意味ではなく、編集者が参考情報として利用するためのものです。研究分野が非常に細分化されている場合、論文に最も近い専門家を見つけることが難しいこともあるため、著者からの提案が役立つ場合があります。
ただし、提案された研究者が必ず査読者になるわけではありません。編集者は専門分野や利益相反の有無などを確認したうえで、査読者を最終的に決定します。また、著者が査読を避けてほしい研究者を指定できる場合もあります。
利益相反(Conflict of Interest)の回避
査読の公平性を保つためには、査読者と著者の間に利害関係がないことが重要です。例えば次のような関係がある場合、査読者として適切ではないと判断されることがあります。
同じ研究グループに所属している
直近で共同研究や共著論文の関係がある
指導教員や学生などの直接的な関係がある
編集者はこうした関係を避けるよう配慮しながら査読者を選定します。
なぜ査読依頼が断られることもあるのか
研究者の多くは、自身の研究や教育、研究費申請など多くの業務を抱えています。そのため、査読を引き受けたいと思っても時間を確保できず、依頼を辞退せざるを得ない場合もあります。
編集者は複数の候補者に依頼を送り、査読を引き受けてもらえる研究者を探します。このような事情もあり、査読には一定の時間がかかる場合があります。
著者の立場では査読結果を待つ時間が長く感じられることもありますが、その背景にはこのような事情があります。MDPIの投稿システム(SuSy)では、論文の現在の進行状況がステータスとして表示されるため、査読依頼中なのか、査読が進行中なのかなど、プロセスの進み具合を確認することができます。
まとめ
査読者は、投稿論文の分野に近い専門知識を持つ研究者の中から、編集者によって選ばれます。研究実績や専門性、利益相反の有無などを考慮しながら、公平で専門的な評価が行われるよう査読者が選ばれています。
著者から見ると、査読は匿名の仕組みで進むため「誰が読んでいるのか分からない」と感じるかもしれません。しかし実際には、研究分野に近い専門家が選ばれ、論文の内容を専門的な視点から評価しています。
次回の記事では、オープン査読とは何か、通常の査読と何が違うのかを解説します。


