研究者のための論文出版ガイド③Response to Reviewersの書き方 ~査読コメントへの効果的な対応
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前回の記事「研究者のための論文出版ガイド②査読者は何を見ているのか ~評価の視点と対応の基本」では、査読の仕組みと査読者がどのような観点で論文を評価しているのかを解説しました。査読結果が届くと、多くの場合「Revision(修正)」が求められます。初めて投稿する場合、査読コメントを受け取って驚くかもしれませんが、これは特別なことではありません。学術ジャーナルでは、論文が一度の査読でそのまま受理されるケースはむしろ少なく、多くの論文が修正を経て掲載に至ります。査読コメントに対応して論文を改善していくことは、学術出版におけるごく一般的なプロセスです。
Revisionが求められた場合、著者は修正した原稿とともに「Response to Reviewers」と呼ばれる回答書を提出します。Response to Reviewersは、査読者からのコメントに対してどのように対応したかを説明する文書です。本記事では、査読コメントへの基本的な対応方法と、Response to Reviewersの書き方のポイントを紹介します。
Response to Reviewersとは何か
Response to Reviewersとは、査読者から寄せられたコメントに対する回答をまとめた文書です。査読では、論文の内容や構成、研究方法、参考文献などについてさまざまな指摘が寄せられます。著者はそれぞれのコメントに対してどのように対応したかを説明し、原稿のどこを修正したかを明確に示します。査読者やエディターは、この回答書と修正稿を合わせて確認し、論文が改善されたかどうかを判断します。そのため、Response to Reviewersは単なる「返信」ではなく、論文の修正内容を説明する重要な資料となります。
Response to Reviewersの基本構成
Response to Reviewersは、査読者が修正内容を確認しやすい形式で作成することが重要です。一般的には次のような構成で作成されます。
①まず査読コメントを引用します。査読者のコメントをそのまま示すことで、どの指摘に対応しているのかが明確になります。
②次に、そのコメントに対する著者の回答を書きます。どのように修正したのか、あるいはなぜその指摘に対して別の判断をしたのかを説明します。
③最後に、原稿のどこを修正したかを示します。ページ番号や行番号を明記すると、査読者が修正箇所を確認しやすくなります。
【実際の記述例】
Response to Reviewersの文章は、英語で次のような形式で書くことが一般的です。
ここでは例として簡単な書き方を示します。
Reviewer 1, Comment 1(査読コメント):
“The description of the research method is insufficient.”
参考日本語訳:研究方法の説明が不十分です。
Authors’ Response(著者の回答):
Thank you for your valuable comment. To clarify the methodology, we have expanded the description of the research procedure in the Methods section (p.4, second paragraph). We have also added an explanation of the sampling frequency and measurement conditions for the water quality analysis.
参考日本語訳:ご指摘ありがとうございます。方法論を明確にするため、Methodsセクション(p.4、第2段落)に研究手順の詳細を追記しました。また、水質分析におけるサンプル採取頻度と測定条件についても補足説明を追加しました。
Revisions in Manuscript(原稿の修正箇所):
The relevant explanation has been added on p.4, lines 120-135.
参考日本語訳:該当する説明をp.4、120-135行に追加しました。
このように、査読コメントの引用、著者の回答、原稿の修正箇所という順序で整理すると、査読者やエディターが修正内容を確認しやすくなります。
査読コメントへの対応のポイント
査読コメントに対応する際には、いくつかの基本的なポイントがあります。
まず、すべてのコメントに回答することが重要です。小さな指摘であっても無視せず、必ず対応するようにします。
次に、丁寧で客観的な表現を心がけます。査読者は研究分野の専門家であり、ボランティアとして査読を行っています。礼儀正しく建設的な文章を書くことが大切です。
また、修正箇所を具体的に示すことも重要です。どこをどのように修正したのかを明確に示すことで、査読者は修正内容を効率的に確認できます。
同意できないコメントへの対応(例)
査読者のコメントに必ずしも同意できない場合もあります。その場合も、英語で冷静かつ論理的に説明することが重要です。例えば次のように書くことができます。
Reviewer Comment(査読コメント):
“Have the authors considered using a questionnaire survey to evaluate residents’ perceptions of water quality?”
参考日本語訳:住民の水質に対する認識を評価するため、アンケート調査を用いることは検討しましたか。
Authors’ Response(著者の回答):
Thank you for this helpful suggestion. The objective of this study is to evaluate changes in river water quality based on quantitative chemical measurements. A questionnaire survey focusing on residents’ perceptions would address a different research question. Therefore, we chose to focus on chemical analysis of water samples. To clarify this point, we have revised the Introduction section to better explain the scope and objective of the study.
参考日本語訳:ご提案ありがとうございます。本研究の目的は、河川水質の変化を化学的測定値に基づいて評価することです。住民の認識を対象としたアンケート調査は別の研究課題になるため、本研究では水質サンプルの化学分析に焦点を当てました。この点を明確にするため、Introductionセクションの研究目的の説明を修正しました。
このように、研究目的や方法の妥当性を根拠として説明することで、査読者と建設的な形で議論することができます。
まとめ
Response to Reviewersは、査読コメントへの対応を整理し、論文の修正内容を説明する重要な文書です。コメントを丁寧に読み取り、論理的で分かりやすい回答を書くことで、査読者やエディターが修正内容を理解しやすくなります。査読対応が完了すると、論文は掲載へ向けて次の段階へ進みます。また、研究分野によってはSpecial Issue(特集号)への投稿など、さまざまな出版の機会があります。次回の記事では、Special Issueとは何か、研究者にとってどのような意味を持つのかについて解説します。


