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いまさら聞けない学術出版用語:DOIとは? URLと何が違うのか

  • 3 日前
  • 読了時間: 7分


論文を読んでいると、

10.xxxx/xxxxxxxx

のような文字列をよく目にします。


参考文献に記載されていることもあれば、

https://doi.org/10.xxxx/xxxxxxxx

というリンクになっていることもあります。


クリックすると論文ページへ移動するため、「DOIは論文のURLのようなもの」と考えている人もいるかもしれません。


しかし、DOIとURLは同じものではありません。


DOIとは?


DOI(Digital Object Identifier)は、論文や研究データなどの対象を継続的に識別するための識別子です。URLがWeb上の「現在の場所」を示すのに対し、DOIは「対象そのもの」を識別します。DOIに結び付けられた所在情報が適切に更新されていれば、掲載場所が変わっても同じDOIからその成果へたどることができます。


では、なぜそのようなことができるのでしょうか。



DOIは「場所」ではなく「対象」を識別する


DOIは、Digital Object Identifierの略です。

DOI財団(DOI Foundation)は、DOIをデジタル、物理、抽象的なものを含む「対象」を識別するための識別子と説明しています。学術情報の世界では、論文、書籍、研究データなどを識別するために広く利用されています。


ここで、URLとの違いを考えてみます。


ある論文が出版社のWebサイトに掲載され、

publisher-a.com/article/123

というURLを持っていたとします。


その後、出版社がWebサイトをリニューアルしたり、出版プラットフォームを変更したりして、論文ページが

new-platform.com/article/123

へ移動することがあります。


この場合、URLは変わります。


一方、論文に付与されたDOIは、論文ページが移動したからといって別の番号にする必要はありません。DOIに結び付いている所在情報を新しいURLへ更新すれば、同じDOIから新しいページへ進めます。



つまりDOIは、「永遠に変わらないWebアドレス」というより、対象を変わらず識別し、その時点での所在へつなぐ仕組みと考える方が正確です。



なぜ同じDOIから研究成果へたどれるのか


DOIを

https://doi.org/10.xxxx/xxxxx

という形でブラウザに入力すると、DOIの解決システムがそのDOIに登録されている情報を参照し、現在の所在へ案内します。多くの場合、そこから出版社やリポジトリなどのランディングページへ移動します。


ここで重要なのは、DOIという文字列だけで永続性が生まれるわけではないことです。


論文の掲載場所が変われば、DOIに結び付いている情報も更新する必要があります。



日本のDOI登録機関であるJapan Link Center(JaLC)も、DOIを長く機能させるためには、リポジトリ、ランディングページ、メタデータを継続的に管理する必要があると説明しています。



「DOIだからリンク切れしない」のではなく、DOIと研究成果の現在の所在を結び付け続ける仕組みがあるから、長期的なアクセスが可能になるということです。



DOIは誰が付けているのか


研究者がDOI財団に直接申請して、自分の論文に番号を付けるわけではありません。



学術出版でよく知られている登録機関の一つがCrossrefです。


Crossrefでは、出版社や学協会などの会員がDOIと、その研究成果についてのメタデータを登録します。タイトル、著者、所属、公開場所などの情報をDOIと結び付けて登録し、その後も必要に応じて更新します。



日本にはJaLCがある



JaLCは2012年にDOI財団から認定された、日本で唯一のDOI登録機関です。科学技術振興機構(JST)、物質・材料研究機構(NIMS)、国立情報学研究所(NII)、国立国会図書館(NDL)の4機関が共同で運営しています。学術論文だけでなく、書籍、学位論文、研究データなども対象としています。


J-STAGEでもJaLC DOIが利用されています。ただし、J-STAGEに掲載されているすべての論文がJaLC DOIというわけではなく、Crossref DOIを使用している登載誌もあります。J-STAGE自身も、JaLC DOIを利用する誌とCrossref DOIを利用する誌の双方があることを案内しています。


DOI登録機関はCrossrefとJaLCだけではありません。


たとえばDataCiteは、研究データをはじめ、プレプリント、画像、試料など幅広い研究成果や研究資源について、DOIとメタデータの登録を支援しています。


このように、DOI Systemという共通の仕組みの中に複数の登録機関があり、それぞれが対象とするコミュニティやサービスを持っています。



DOIには、リンク以外の情報も結び付いている


DOIというと、クリックして論文へ移動する機能が目立ちます。

しかし、DOIには研究成果についてのメタデータも結び付いています。


Crossrefを例にすると、タイトル、著者、所属、出版日、研究費、オンライン上の所在などの情報を登録できます。登録されたメタデータは外部から取得でき、さまざまな情報システムで研究成果を検索したり、別の情報と関連付けたりするために利用されます。



JaLCでも、DOIとともに登録されたメタデータを外部へ流通させることを、その主要な役割の一つとしています。


つまりDOIは、「クリックすると論文へ行ける番号」だけの存在ではありません。研究成果を識別し、その成果についての情報を別のシステムと結び付けるための手掛かりでもあります。



研究者にとってDOIは何に役立つのか


仕組みの詳細を覚える必要はあまりないかもしれませんが、DOIがどのような役割を持つのかを知っておくと、次のような場面で役立ちます。


研究成果を正確に特定する


似たタイトルの論文や、同じ著者による複数の論文があっても、DOIがあれば特定の研究成果を識別できます。タイトルの表記が多少異なっていても、「どの研究成果を指しているのか」を確認する手掛かりになります。


引用先につながる


参考文献にDOIが含まれていれば、引用された研究成果を特定し、原典へ進みやすくなります。過去記事「引用されるとき、研究の何が使われているのか」でも触れたように、正確な書誌情報は、研究成果を後続研究へつなぐための基盤になります。


DOIを表示する場合、CrossrefはCrossref DOIについて、

https://doi.org/10.xxxx/xxxxx

というHTTPSの完全なリンク形式を推奨しています。

以前見られた doi:10.xxxx/xxxxx や http://dx.doi.org/... ではなく、現在はこの形式が基本です。


ただし、参考文献の表記方法について投稿先ジャーナルから指定がある場合は、そのスタイルに従います。


掲載場所が変わっても同じDOIを使える


出版社のWebサイトや出版プラットフォームが変わっても、DOIに結び付く情報が適切に更新されていれば、同じDOIから研究成果へ進むことができます。

研究成果をSNS、研究者プロフィール、研究室のWebサイトなどで紹介する際にも、DOIは長期的に成果を特定するための手掛かりになります。



DOIについてよくある誤解


「DOIは論文の永久URL?」


完全には同じではありません。DOIはURLそのものではなく、対象を継続的に識別するための識別子です。


https://doi.org/~という形にすればWeb上のリンクとして利用できますが、DOIから現在の所在へ正しく進めるためには、登録された情報を継続して維持する必要があります


「DOIが付いていればオープンアクセス?」


そうとは限りません。DOIは研究成果を識別するための仕組みです。論文を無料で全文閲覧できるかどうかを示すものではありません。


DOIから移動した先の論文がオープンアクセスの場合もあれば、購読や個別購入が必要な場合もあります。


「DOIが付いていれば、信頼できるジャーナル?」


これも別の問題です。DOIの役割は、研究成果を識別し、その所在や関連情報へつなぐことです。DOIが付与されていること自体は、論文の研究内容、査読の質、出版倫理、ジャーナルの信頼性を認証するものではありません。


ジャーナルを判断するときには、DOIの有無とは別の情報を見る必要があります。


「DOIはジャーナル論文だけに付く?」


いいえ。DOIはジャーナル論文だけを対象にした仕組みではありません。

学術情報の分野でも、書籍、研究データ、プレプリント、画像など、さまざまな成果や研究資源に利用されています。


「DOIを登録したら、情報は二度と変えられない?」


DOIそのものと、DOIに結び付けられた情報は分けて考えます。

研究成果を識別するDOIは維持しながら、掲載URLやその他のメタデータは必要に応じて更新できます。


むしろ、研究成果の所在が変わったときに関連情報を更新することが、DOIを長期的に機能させるために重要です。



DOIは、研究成果を長く識別するための仕組み


論文ページのURLは、出版社のWebサイトや出版プラットフォームの変更によって変わることがあります。


DOIは、その場所そのものではなく、研究成果を識別します。そして、DOIに現在の所在やメタデータを結び付け、それを継続して維持することで、研究成果を長期的に見つけ、引用し、他の情報と結び付けられるようにします。


DOIを見慣れている研究者にとっては、普段あまり意識することのない仕組みかもしれません。しかし、その短い文字列の裏側では、研究成果を長く見つけられる状態にするための情報管理が続いています。


次に論文のDOIを見かけたら、単なる「論文へのリンク」ではなく、その研究成果を長く識別し続けるための仕組みだと思い出してみてください。


「いまさら聞けない学術出版用語」では、学術出版でよく使われる用語を、言葉の意味だけでなく、その仕組みや研究者との関わりから解説します。

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