投稿先ジャーナルの選び方:「Think. Check. Submit.」
- 3月4日
- 読了時間: 6分

(※本記事は、mdpi.comの英文ブログ記事「Finding the Right Journal for Publication: Think. Check. Submit.」 を翻訳したものです)
研究成果に最も適したジャーナルを選ぶことは、その可視性や影響力、さらには信頼性にも関わる重要な判断です。投稿先が適切かどうかには、著者自身が判断することが欠かせません。必要に応じて、同僚や編集者など、複数の視点から意見を求めることも有効です。
MDPIでは、「Think. Check. Submit.」 のような広く知られた透明性の高い情報源や、Web of Science、Scopus、Directory of Open Access Journals(DOAJ)といった索引データベースを活用し、ジャーナルを評価することを推奨しています。こうした情報を参考にすることで、ご自身の研究が適切な読者層に届くかどうかを確認できます。
本記事では、信頼できる方法やツールを用いて、投稿先となる学術ジャーナルを見つけるための具体的な手段をご紹介します。
「Think. Check. Submit. 」とは何か、なぜ活用した方が良いのか?
「Think. Check. Submit. 」は、研究者が信頼できるジャーナルや出版社を見極めるための無料のオンラインリソースです。評価に役立つチェックリストや実用的な資料が提供されており、基準が不明確な既存のリストに頼ることなく、自ら批判的に検討し、十分な情報に基づいて判断することを支援します。
基準が明示されていないリストは、学術出版への不信感を助長し、透明性を損なう要因となってきました。出版倫理委員会(COPE)は、著者や機関に対し、「いわゆる“ハゲタカジャーナル”のリストについても、個々のジャーナルと同様の慎重さで精査すべきである。使用されている基準が明確でないリストには依拠すべきではない」と勧告しています。
「ハゲタカ」という言葉は、ときに不適切に用いられることがあります。特に、従来の購読モデルに異議を唱える新興ジャーナルを「信用できないもの」として貶めるために使われる場合もあると、Journal of Clinical Medicine編集長のEmmanuel Andres教授は、2025年にResearch Informationへの寄稿で指摘しています。
COPEの声明でも、「そのようなリストは構造的な偏りを助長し、限られた資源の中で誠実に運営されている正当なジャーナルまで含めてしまう可能性がある」と説明されています。
「Think. Check. Submit.」では、出版社やジャーナルがいわゆる“ハゲタカ”であるかどうかを、著者自身が独立して判断することを勧めています。ここでいう“ハゲタカ”とは、「編集や査読といった本来提供されるべきサービスを行う意図がないにもかかわらず、掲載料のみを請求する出版社」を指します。
MDPIは、著者が不適切なジャーナルへ投稿することを防ぐ観点から、「Think. Check. Submit.」の取り組みを全面的に支持しています。
ジャーナル評価の3つのステップ①:「THINK」
「Think. Check. Submit. 」のウェブサイトでは、出版社やジャーナルが適切かどうかを自ら評価できるチェックリストが公開されています。
プロセスは大きく3つの段階に分かれます。最初のステップは「THINK」です。
THINK ― 信頼できるジャーナルに投稿しようとしていますか。
この問いを検討する背景には、次のような事情があります。
・世界中で発表される研究論文の数が増加していること
・新たな出版社が毎週のように設立されていること
・ハゲタカ出版に対する研究者の懸念が高まっていること
・投稿先選択に関する最新情報を得ることが容易ではないこと
ジャーナル評価の3つのステップ②:「CHECK」
CHECK ― 次の質問に沿って、ジャーナルや出版社を評価します。
・ご自身や同僚はそのジャーナルを知っていますか。
・出版社を容易に特定し、連絡を取ることができますか。
・査読の方法について明確に説明されていますか。
・論文は信頼できるデータベースで索引化・アーカイブされていますか。
・掲載料などの費用が明示されていますか。
・著者向けガイドラインが出版社のウェブサイトに掲載されていますか。
・出版社は認知された業界団体の現会員ですか。
各項目には補足的な問いが設けられており、必要に応じて自ら確認できるようリンクも示されています。
例えば、「出版社は認知された業界団体の現会員ですか」という問いでは、COPE、DOAJ、Open Access Scholarly Publishing Association(OASPA)、SciELO などの団体が参照先として示されています。
ジャーナル評価の3つのステップ③:「SUBMIT」
SUBMIT ― チェックリストの大半、またはすべての項目を確認できた場合にのみ投稿しましょう。
このプロセスを経ることで、投稿先として適切かどうかを判断するために何を確認すべきかが明確になります。信頼できる業界団体や専門家ネットワークを参照しながら検討する、重要なステップです。
なお、書籍や書籍章向けのチェックリストも用意されています。
ジャーナル評価を支援するツール
ベルギーのリエージュ大学図書館(ULiege Library)が提供する無料ツール「Compass to Publish」は、「Think. Check. Submit. 」でも評価ツールとして紹介されています。特に、論文掲載料(APC)を請求する、あるいは不明確な形で提示しているオープンアクセスジャーナルを中心に、その真正性を分析的に検討するためのツールです。
透明性のある方法論と評価尺度を採用しており、学術コミュニティがハゲタカジャーナルや不適切な出版社を理解する一助となることを目的としています。
ただし、次の点には留意が必要です。
・APCを請求しないと明示しているジャーナルの評価には適していません。
・ジャーナルの質そのものを評価するものではなく、真正性の程度を示すものです。
・ハゲタカジャーナルを網羅的に特定する基準一覧を提示するものではありません。
・数クリックで結論が出る評価ではなく、研究者自身が分析プロセスに参加する設計になっています。
「Compass to Publish」の使い方
まず、対象ジャーナルの基本情報を入力します。その後、「Yes」「No」「I don’t know」のいずれかで回答する質問票に進みます。回答に応じて、赤(ハゲタカの可能性が高い)から緑(真正性が高い)までのスケールが表示されます。
質問には、DOAJなどの索引データベースへのリンクが示されることもあり、自ら確認できるようになっています。主な問いには次のようなものがあります。
・そのジャーナルはDOAJに収載されていますか。
・出版社またはジャーナルはCOPEの会員ですか。
・著名な出版社が発行していますか。
・Stop Predatory Journals のウェブサイトに掲載されているリストに含まれていますか。
・論文は実際に無料で公開されていますか。
すべての質問に回答すると、ハゲタカである可能性の度合いがスケールで示されます。すでに他の利用者が評価している場合は、その結果も参考情報として表示されます。
このツールは最終的な結論を断定するものではありませんが、ジャーナルの真正性を批判的に検討する際のガイドとして活用できます。
適切なジャーナルで研究を発表するために
MDPIは、研究者がオープンアクセス形式で研究成果を発表できる機会を提供することに取り組んでいます。
投稿先の選択にあたっては、著者ご自身の判断が何より重要です。本記事でご紹介した「Think. Check. Submit. 」や各種索引データベースなど、広く認知され透明性の高い情報源を活用し、十分に検討したうえで投稿先を決定されることをお勧めします。
MDPIでは500誌を超えるジャーナルを展開しており、各ジャーナルのWebページに詳細情報を掲載しています。MDPIおよびオープンサイエンス推進に向けた取り組みについて、ぜひご確認ください。


