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研究者のための論文出版ガイド①論文投稿から掲載まで ~ MDPIの査読・編集プロセス

  • 14 時間前
  • 読了時間: 7分


英語論文を初めて投稿する場合、「投稿してから論文が掲載されるまでに、どのようなプロセスを経るのか」が気になる方も多いのではないでしょうか。学術ジャーナルへの投稿では、査読(ピアレビュー)や編集判断など複数の段階を経て論文が評価されます。


本記事では、MDPIジャーナルにおける論文投稿から出版までの基本的な流れを説明します。初めて投稿する方や大学院生の方が全体像を理解するための参考としてご覧ください。



1. 投稿前の準備


論文投稿の前に、まずジャーナルの投稿規定を確認します。MDPIは500誌以上のオープンアクセスジャーナルを運営しており、ジャーナルごとに対象分野や論文形式が定められています。研究内容に適したジャーナルを選ぶことが重要です。


[参考]

ジャーナルファインダー(投稿先ジャーナルの選定を支援するツール):


原稿はジャーナルのレイアウトガイドに沿って作成する必要があります。タイトル、著者情報、アブストラクト、本文、参考文献などの基本構成に加え、図表や補足資料の形式についても確認しておきましょう。


[参考] 

論文レイアウトガイド: https://www.mdpi.com/authors/layout

参考文献スタイルガイド:https://www.mdpi.com/authors/references


MDPIではLaTeXまたはWord形式の原稿の投稿を受け付けています。

投稿に関する詳細は著者向けページにまとめられています。


[参考] 

著者向けページ https://www.mdpi.com/authors


また、投稿先のジャーナルがSpecial Issue(特集号)への投稿を募集している場合、通常号の編集委員とは異なるゲストエディターが編集を担当します。Special Issueへの投稿も選択肢のひとつです。


2. オンライン投稿


原稿の準備ができたら、MDPIの投稿システム(SuSy)を通じて論文を提出します。

投稿時には、著者情報、研究分野、カバーレターなどを入力します。また、研究倫理に関する宣言(利益相反や倫理審査など)も確認されます。


著者は投稿時に、査読を希望する専門家を推薦することも、逆に特定の人物を査読から除外するよう申請することもできます。これらの要望は、客観的な審査を妨げない範囲で尊重されます。


3. プレチェック(Pre-Check)


投稿された原稿はまず2段階のプレチェックを受けます。


① 編集部によるテクニカルチェック

担当するManaging Editorがジャーナルの投稿規定への適合性、研究の品質・倫理基準の遵守、図表や参考文献の形式などを確認します。必要に応じて修正を依頼されることがあります。

② Academic Editorによる編集チェック

通常投稿の場合は編集長(Editor-in-Chief)、Special Issueの場合はゲストエディターが担当します。ここでは研究テーマがジャーナルの対象分野に適しているか、研究の方法論や参考文献の妥当性なども含めて評価されます。エディターは「却下」「査読前の修正要請」「査読進行」のいずれかを判断します。


なお、MDPIでは論文の受理・不採択の決定はAcademic Editorが行います。MDPIの社内スタッフが採否を決定することは一切ありません。これはMDPIが掲げる編集の独立性(Editorial Independence)の原則によるものです。


4. 査読(ピアレビュー)


査読は学術出版において品質を保証する重要なプロセスです。MDPIの多くのジャーナルでは「シングルブラインド」方式を採用しており、著者は査読者の氏名を知らないものの、査読者は著者の氏名を知った上で審査を行います。一部のジャーナルでは、双方が匿名となる「ダブルブラインド」方式も採用されています。


各論文には原則として2名以上の査読者が割り当てられます。査読者は通常PhD取得者であり、投稿論文の分野での実績(ScopusやORCIDで確認)が求められます。著者や所属機関との利益相反がないことも必須条件です。


査読者は原則7〜10日以内に査読コメントを提出します(要請があれば延長可能)。査読結果には通常、以下のような判断が含まれます。


•    Accept(そのまま受理)

•    Minor Revision(軽微な修正)

•    Major Revision(大幅な修正)

•    Reject and Encourage Resubmission(不採択だが再投稿を推奨)

•    Reject and Decline Resubmission(不採択・再投稿不可)


なお、MDPIでは「オープン査読(Open Peer Review)」を選択することもできます。オープン査読を選んだ場合、査読レポートと著者の回答が論文と一緒に公開されます。これにより査読プロセスの透明性が高まります。また、査読者が任意で氏名を開示することもでき(Open Identity)、査読への貢献が公式に記録されます。


5. リビジョン(著者による修正)


査読コメントに基づき、著者は論文を修正します。修正の際には、査読者のコメントひとつひとつに対する回答書(Response to Reviewers)を提出するのが一般的です。回答書では、指摘事項にどのように対応したかを具体的に説明します。


修正稿は、必要に応じて同じ査読者による再審査に回されます。Major Revisionを求めた査読者や却下を推薦した査読者には、修正稿が自動的に送られます。なお、Major Revisionは通常2回までとなっています。


「Reject and Encourage Resubmission」の判断を受けた場合、著者は大幅な修正を行った上で同じジャーナルに再投稿することができます。再投稿された原稿には新しい原稿IDが付与されますが、通常は同じ査読者が招待されます。


6. エディターによる最終判断


2名以上の査読レポートが揃った後、Academic Editorが最終的な採否を判断します。エディターは、査読者の適切さ、コメントの妥当性と著者の回答、論文全体の科学的品質を確認した上で決定を下します。


査読者が不採択を推薦していても、エディターが受理を支持する場合は、別のEditorial Board Memberによる「ダブル判断」が求められます。これにより、個々の判断の偏りが抑制されます。


不採択(Reject and Decline Resubmission)の決定に異議がある場合、著者は3ヶ月以内に不服申し立て(Appeal)をジャーナルの編集部に申請することができます。


7. 受理(Acceptance)と論文掲載料(APC)


エディターが論文の掲載を認めると、正式に受理となります。この段階で、著者には論文掲載料(Article Processing Charge: APC)の支払い案内が送られます。MDPIはオープンアクセス出版モデルを採用しており、掲載された論文はすべてのユーザーが無料で閲覧できる形で公開されます。


APCはジャーナルによって異なります。大学・研究機関がMDPIのIOAP(Institutional Open Access Program)に参加している場合、所属研究者はAPCの割引を受けられることがあります。詳細はAPCページでご確認ください。


8. 制作・校正(Production & Proof)


受理後、論文はMDPIの社内チームによって出版用のレイアウトに組み直されます。この段階では、英語編集、XMLへの変換なども行われます。大幅な編集が必要となるレアケースでは、著者の事前承認を得て追加料金で英文校正サービスを提供しています。こちらの英語編集はMDPIの専門スタッフが担当しますが、著者が別途、他社の英文校正サービスを利用することや英語を母語とする同僚に相談することも可能です。


著者には校正刷り(proof)が送られます。誤字・脱字、レイアウト上の問題などを確認し、必要な修正を行います。この段階での修正は軽微なものに限られます。


9. オンライン公開


校正が完了すると、論文はオンラインで公開されます。MDPIのジャーナルでは、受理後比較的短期間で論文が公開されるのが特徴です。公開された論文にはDOI(デジタルオブジェクト識別子)が付与され、世界中からアクセスできるようになります。


MDPIへの投稿論文はCreative Commons (CC BY)ライセンスのもとで公開されます。このため、元論文を適切に引用すれば、許可を必要とせず再利用・再配布が可能です。


まとめ


MDPIにおける論文投稿から出版までのプロセスを整理すると、以下の流れになります。


•    投稿前の準備(ジャーナル選定・原稿作成)

•    オンライン投稿(SuSyシステム経由)

•    初期チェック(テクニカルチェック+Academic Editorによる評価)

•    査読(2名以上の専門家によるシングルブラインド査読)

•    リビジョン(査読コメントへの対応・修正)

•    エディターによる最終判断

•    受理・APC支払い

•    制作・校正

•    オンライン公開(DOI付与)


プロセスが多いため、初めて投稿する場合には、少し複雑に感じるかもしれませんが、各段階について事前に理解しておくことでスムーズに対応が行えます。日本語でのサポートが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。

 

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