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インタビュー:日本大学・小菅 康弘先生(Cells誌優秀査読者賞)

8月19日
読了時間: 5分

MDPIは、迅速な出版プロセスを実現する一方で、科学的厳密さと研究の信頼性を重視しています。その両立を可能にしているのが、日々誠実に査読に取り組んでくださる査読者の皆さまのご協力です。


MDPIの「優秀査読者賞(Outstanding Reviewer Award)」は、投稿された論文に丁寧に目を通し、徹底した専門的評価を行いながらも、迅速なフィードバックを提供してくださった査読者に贈られる、各ジャーナル年次の表彰制度です。前年度にご活躍いただいた査読者の中から、特に顕著な貢献を示された方が選出されます。


今回は、Cells誌にて2025年度の優秀査読者賞を受賞された、日本大学薬学部薬理学研究室の小菅 康弘先生にお話を伺いました。



1. このたび、Cells誌の 2025 年 Outstanding Reviewer Award を受賞されました。受賞を知った際のご感想をお聞かせください。


率直に驚きました。査読は、学術研究の質を支える研究者の大切な役割だと考え、ひとつひとつの論文に向き合ってきましたので、その姿勢を評価していただけたことをうれしく思います。今回の受賞を励みに、今後も公平で建設的な査読を心掛けたいと思います。



2. 先生の研究室では、認知症や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、神経障害性疼痛などの神経難病について研究されています。先生が神経難病の薬理学研究に取り組まれるようになったきっかけと、この分野の研究に感じている意義を教えてください。


学生時代に指導教員のもとで神経細胞死の研究に携わり、その研究姿勢や考え方に大きな影響を受けたことが、現在の研究の原点です。その中で、神経細胞が障害される仕組みを解明し、治療につなげられる可能性に魅力を感じ、この分野に取り組むようになりました。


特に、神経細胞が死に至る前の変化を捉え、早期に介入することが重要だと考えています。いまだ十分な治療法のない認知症やALSなどに、新たな治療選択肢を示すことが研究の目標です。



3. 認知症や ALS などの神経難病では、神経細胞が徐々に障害されていきます。神経細胞が失われる仕組みを解明し、治療薬の開発につなげるうえで、現在どのような点が大きな課題となっているのでしょうか。


神経難病では、酸化ストレス、小胞体ストレス、ミトコンドリア障害、神経炎症など、複数の異常が相互に影響しながら病態が進行します。また、神経細胞だけでなく、ミクログリアやアストロサイトなどの周囲の細胞も深く関与しています。そのため、ひとつの分子や経路だけでは病態全体を説明できないことが大きな課題です。さらに、神経細胞が失われてからでは機能の回復が難しいため、細胞死に先行する可逆的な機能障害を早期に捉える必要があります。


基礎研究で得られた成果を患者さんの治療につなげるためには、病態を早期に捉える指標の開発、動物モデルとヒトの病態との違いを埋める研究、薬剤を脳や脊髄へ効率よく届ける技術の確立も重要です。そのため、私たちは、これらの課題に関する研究にも取り組んでいます。



4. 先生は、ニンニク由来成分の S-アリルシステイン(SAC)が脳疲労やアルツハイマー病に及ぼす作用についても研究されています。身近な食品に含まれる成分から、病気の予防や治療につながる可能性を見いだす研究の面白さと、実用化に向けた課題について教えてください。


食品には、長い食経験を持ちながら、その作用機序が十分に解明されていない成分が数多くあります。身近な食品の成分が、神経細胞を守る仕組みを解き明かす手掛かりになることは、この研究の大きな面白さです。


私たちは、ニンニク由来成分のS-アリルシステイン(SAC)が、酸化ストレスや小胞体ストレス、カルパインの活性化など、神経細胞障害に関わる複数の過程に作用する可能性を明らかにしてきました。このように、食品由来成分には、単一の標的を強く抑える医薬品とは異なり、複数の病態因子に緩やかに働きかける可能性があるのではないかと期待しています。


一方、基礎研究で効果が認められても、直ちに病気の予防や治療に利用できるわけではありません。体内に取り込まれる量や脳への移行性、適切な摂取量、長期的な安全性を明らかにし、最終的には臨床研究によって有効性を検証する必要があります。科学的根拠を一つずつ積み重ねることが、実用化に向けて重要だと考えています。



5. Cells誌のように幅広い生命科学分野を扱うジャーナルの論文を査読する際、研究のどのような点を特に重視されていますか。また、著者にとって有益な査読とするために心掛けていることがあれば教えてください。


研究目的に対して実験計画や対照群が適切であるか、データが結論を十分に支持しているかを重視しています。また、著者にも有益な査読とするため、問題点を指摘するだけでなく、なぜ修正が必要なのか、どのように改善できるのかを具体的に示すよう心掛けています。


また、著者の考え方を尊重しながら、論文の科学的な信頼性と分かりやすさを高めること

が、査読者の役割だと考えています。

 


6. 神経薬理学や創薬研究を目指す学生、若手研究者に向けて、この分野で研究する魅力や、今後身に付けてほしいことについてメッセージをお願いします。 


神経薬理学や創薬研究には、分子や細胞で得られた発見を、病気の理解や治療へつなげられる魅力があります。新しい技術を学ぶとともに、「なぜこの現象が起こるのか」「この結果から何が言えるのか」と問い続ける姿勢を大切にしてください。


研究では思いどおりの結果が得られないこともありますが、失敗や予想外の結果が新しい発見につながることもあります。試行錯誤を前向きに捉え、研究そのものを楽しんでほしいと思います。


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