「MDPI Japan編集委員会議2025」でいただいたご意見と今後の方向性
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- 2 日前
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先日の記事では、「MDPI Japan編集委員会議2025」の開催概要と当日の様子をご紹介しました。本稿では、その場で編集委員の先生方からいただいた主なフィードバックと、それを受けたMDPI側の今後の方向性について、いくつかのテーマに分けてご紹介します。
1. 会議の位置づけと目的の再確認

今回の会議は、日本の編集委員の先生方と直接顔を合わせ、
MDPIのオープンアクセス(OA)ミッションや出版モデルの背景を共有すること
迅速な出版プロセスと品質管理について、本社側の考えを説明すること
日本市場に特有の課題(評価制度、コミュニケーション、評判など)について率直なご意見を伺うこと
を主な目的として実施されました。
会議を通じて、「日本の研究コミュニティとどう向き合うべきか」という点について、多くの示唆をいただく機会となりました。
2. テーマ①:日本市場での認知・評価と情報発信

最も多く時間が割かれたテーマの一つが、日本におけるMDPIの認知と評価、そして情報発信のあり方でした。
MDPIのOAミッションや査読・編集体制が、日本の研究者や研究機関側に十分に伝わっていない部分があること
一部では、いわゆる「ハゲタカジャーナル」という誤解が残っており、研究評価の場面でMDPI論文が十分に理解されていないケースがあること
10年前と比べると状況は改善しつつあり、IFの向上や投稿数の増加というポジティブな変化も見られること
など、現状を踏まえた率直なコメントをいただきました。
そのうえで、今後の方向性としては、
日本語でのわかりやすい説明資料(編集プロセス、品質管理など)の拡充
編集委員が現場でよく寄せられる質問(例:外部サイトによる評価やブラックリストに関する問い合わせなど)に対して、MDPIが公表している公式アナウンスや査読・編集体制、主要データベースへの収載状況などを踏まえた整理された回答例を用意すること
日本の研究者が実際にどのようにMDPI論文を活用しているか、といった成功事例の紹介
といった「誤解を減らし、実態を伝える」ためのコミュニケーションが重要である、という点で意見が一致しました。
3. テーマ②:編集オペレーションと品質に関するフィードバック

編集・査読に関しては、MDPIの迅速で整理されたワークフロー自体は強みとして評価されている一方で、改善の余地についても具体的なご指摘をいただきました。
ポジティブな点として挙げられたのは、
投稿から最初の判定までのスピードが速いこと
編集部とのやり取りが比較的わかりやすく、著者側のストレスが少ないこと
などでした。
一方で、今後の改善ポイントとして、
査読者マッチングの精度向上(専門から外れた査読依頼を減らすこと)
ゲストエディターを含む編集陣に向けた、特集号(Special Issue)の企画・運営・品質管理に関するガイドラインの更なる明確化
「インパクトファクター中心」だけではない、分野に応じた多面的な品質の捉え方(症例報告やデータペーパーなどの位置づけ)
などが挙げられました。
現在、これらのポイントは本社および各ジャーナル編集部と共有されており、査読者データベースの活用方法や、ゲストエディター向けのガイダンス改善など、運用面での検討が進められています。
4. テーマ③:日本向けコミュニケーションとコミュニティづくり

コミュニケーションとコミュニティ形成についても、いくつか重要な示唆をいただきました。
日本語での情報提供(編集プロセス、研究倫理、オープンアクセスの意義など)をもう一歩踏み込んでほしい
メール配信については、「多すぎる」「対象外に送られてきている」と感じられることもあるため、対象を絞った配信が望ましい
異なる分野の編集委員同士が意見交換できる場が貴重であり、今回のような小規模で顔の見えるラウンドテーブル形式は有意義だった
といったご意見です。
今回の会議では、少人数・ハイブリッド形式・同時通訳付きという設定が功を奏し、オンライン・オフライン双方から積極的な発言がありました。また、会議後のランチの場でも、分野を超えた交流が自然に生まれていたことが印象的でした。
今後も、日本の研究者の皆さまと継続的に対話できる小規模な場を、オンライン・オフライン両方の形で検討していくことが重要だと感じています。
5. おわりに

今回の編集委員会議では、MDPIに対する厳しいご指摘も含め、多くの建設的なご意見・ご提案をいただきました。会議後、Peter Rothからも「ここまでMDPIを良くしようという視点から具体的なアイデアをいただけるとは正直思っていなかった」とのコメントがあり、参加された先生方のMDPIに対する期待の大きさを改めて感じています。
なお、MDPIは、いわゆる「ハゲタカジャーナル」として言及されることがある現状も認識しています。こうした誤解や不正確な情報に対しては、査読プロセスや編集体制、主要データベースへの収載状況など、客観的な事実にもとづく情報を公開し、透明性を高めることで対応してきました。
たとえば、外部サイト predatory.org によるMDPI誌の扱いについては、公式アナウンス(https://www.mdpi.com/about/announcements/5482) において、第三者による「リスト」のみに依拠せず、信頼できる情報源を踏まえて判断することを読者に呼びかけています。今後も、このような取り組みを継続しつつ、日本の研究者の皆さまと対話を重ねることで、懸念や疑問に一つひとつ丁寧に向き合っていきたいと考えています。
MDPI Japanとしては、いただいたフィードバックを真摯に受け止め、日本の研究コミュニティにとって信頼できるパートナーであり続けるために、今後も対話を重ねていきたいと考えています。2026年にも今回と同様に、日本の編集委員の先生方との意見交換の場を設けることを計画しており、具体的な内容や開催方法については今後検討を進めてまいります。
MDPIやオープンアクセス出版に関するご質問やご意見がございましたら、どうぞお気軽にMDPI Japanまでお寄せください。
MDPI Japan編集委員会議2025レポート [全3回]
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