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いまさら聞けない学術出版用語:ISSNとは? DOIやISBNと何が違うのか

18 時間前
読了時間: 7分


学術ジャーナルのWebサイトを見ると、「ISSN 〇〇〇〇-〇〇〇〇」という番号が記載されています。論文に付いているDOIや、書籍に付いているISBNは知っていても、「ISSNは何のための番号?」と聞かれると、意外と説明しにくいかもしれません。


ISSNは、学術ジャーナルや雑誌、新聞などの逐次刊行物をはじめ、継続して刊行・更新される「継続資料」を識別するための国際標準番号です。


今回は、ISSNが何を識別しているのか、DOIやISBNとはどう違うのか、なぜ同じジャーナルに複数のISSNが存在することがあるのかなど、ISSNの基本を解説します。



ISSNとは?


ISSNは「International Standard Serial Number」の略称で、日本語では「国際標準逐次刊行物番号」と呼ばれます。ISO 3297で定められた国際標準で、「1234-5678」のように8桁の数字で表されます。


ISSNの対象となるのは、学術ジャーナル、雑誌、新聞、紀要などの逐次刊行物をはじめとする「継続資料」です。継続資料とは、あらかじめ終了時期を定めず、継続して刊行・更新される資料を指します。逐次刊行物だけでなく、継続的に更新されるデータベースなども含まれます。


ISSNは、パリに本部を置くISSN International Centreと、各国・地域のISSNセンターからなるISSN Networkによって管理されています。日本では、国立国会図書館がISSN日本センターとして、日本国内で刊行される資料のISSN登録・管理を行っています。



DOIやISBNとは何が違う?


ISSNとよく似た識別子として、DOIやISBNがあります。

識別子

主な識別対象

使用例

ISSN

逐次刊行物などの継続資料

学術ジャーナル、雑誌、新聞など

ISBN

単行出版物

書籍など

DOI

デジタル上のコンテンツ

学術論文、研究データなど


ただし、「ISSN=雑誌、ISBN=本、DOI=論文」と完全に分けられるわけではありません。

たとえば、学術出版では一つの出版物の中で複数の識別子が使われることがあります。論文集シリーズを考えてみましょう。


シリーズ全体にはISSN、シリーズを構成する個々の書籍にはISBN、その中に収録された個々の論文にはDOIが付与される、といったケースがあります。


つまり、これらの識別子は競合するものではなく、「何を識別するのか」が異なっています。


DOIについては、過去記事「いまさら聞けない学術出版用語:DOIとは? URLと何が違うのか」でも詳しく紹介しています。



ISSNは「キータイトル」と結びついている


ISSNを理解するうえで重要なのが、「キータイトル(key title)」です。


キータイトルとは、ISSNを登録する際に、その継続資料を一意に識別するために定められるタイトルです。一つのISSNと一つのキータイトルが対応することで、同じような名称を持つ出版物があっても区別できるようになっています。


ここで重要なのは、ISSNが「出版社の番号」ではないということです。


たとえば、ある学協会誌の出版を担当する出版社がA社からB社に変わったとしても、それだけを理由にISSNが変更されるわけではありません。ISSNは出版社そのものではなく、タイトルや媒体と結びついているからです。


一方、出版物のタイトルに大きな変更があった場合には、新しいISSNが必要になります。この点については後ほど詳しく見てみましょう。



なぜ紙版とオンライン版でISSNが違う?


同じ学術ジャーナルなのに、異なるISSNが二つ記載されているのを見たことがあるかもしれません。


これは、ISSNがタイトルだけでなく「媒体」も区別しているためです。


同じタイトルのジャーナルに印刷版とオンライン版がある場合、それぞれに異なるISSNが付与されます。


たとえば、

ISSN XXXX-YYYY(Print)

ISSN XXXX-ZZZZ(Online)

というように表示されます。


「p-ISSN」「eISSN」といった表記もよく使われますが、これらが別種類の識別子というわけではありません。いずれもISSNであり、どの媒体に対応する番号なのかを区別して表示しています。


一方、オンライン版だけで刊行されているジャーナルであれば、媒体別に二つのISSNを持つ必要はありません。MDPIのジャーナルサイトで基本的にISSNが一つだけ表示されているのは、このためです。



ISSN-Lとは?


ここでひとつ疑問が生じます。

同じジャーナルでも、印刷版とオンライン版に別々のISSNが付いているのであれば、データベースなどでは両者をどのように「同じジャーナル」として扱うのでしょうか。


そこで使われるのが「ISSN-L(Linking ISSN)」です。


ISSN-Lは、異なる媒体で刊行されている同じ継続資料を関連付けるための識別子です。印刷版とオンライン版にそれぞれ別のISSNがあっても、ISSN-Lを使うことで、それらをまとめて扱うことができます。


ISSN-Lのためにまったく新しい番号が発行されるわけではなく、関連するISSNの一つがISSN-Lとして指定されます。


現在のISSNの規格では、複数のISSNを関連付ける「クラスターISSN」という考え方が導入されており、ISSN-Lはその一つです。


普段ジャーナルを読むだけならISSN-Lを意識することはほとんどありません。しかし、図書館のシステムやデータベースなどで、媒体の違いを超えて同じ出版物を探したり結びつけたりするときに重要な役割を果たしています。



ジャーナル名が変わったらISSNはどうなる?


先ほど、ISSNは「キータイトル」と結びついていると説明しました。

そのため、ジャーナルのタイトルに大きな変更があり、キータイトルを変更する必要が生じた場合には、新しいISSNが付与されます。


ただし、タイトルが少し変わっただけで、必ず新しいISSNになるわけではありません。ISSNのルールでは、タイトル変更を「major change」と「minor change」に分け、新しいISSNが必要かどうかを判断します。


たとえば、ジャーナルが統合・分割された場合など、タイトルに重要な変更が生じれば、新しいISSNが必要になることがあります。一方、出版社が変わっただけでタイトルが変わらなければ、原則として同じISSNが引き続き使用されます。


この仕組みによって、あるジャーナルがどのようなタイトルで刊行されてきたのかを正確に識別できます。



ISSNは実際に何に使われている?


ISSNは、ジャーナルのWebサイトに表示するためだけの番号ではありません。


図書館の蔵書管理や電子ジャーナルのシステム、学術情報データベースなどでは、同じジャーナルを正確に識別するためのキーとしてISSNが利用されています。


特に、タイトルだけで出版物を照合するのは簡単ではありません。同じ、あるいはよく似たタイトルを持つ雑誌が存在することもあれば、タイトルが途中で変更されることもあります。言語や表記方法によってタイトルの表記が揺れる場合もあります。


そこで、文字列としてのタイトルではなく、ISSNという識別子を利用することで、より正確に出版物を特定できます。


一方で、印刷版とオンライン版ではISSNが異なるため、一方のISSNだけを使って検索やデータ照合をすると、もう一方を拾えない場合があります。異なる媒体版を結びつけるISSN-Lは、こうした場面でも役立ちます。


研究者が日常的に意識する機会は少ないかもしれませんが、ISSNは図書館や出版社、学術情報サービスの裏側で、出版物を正確に結びつけるために使われています。



ISSNがあれば信頼できるジャーナルなのか?


ここは誤解しやすいところです。


ISSNが付与されていることは、そのジャーナルの研究内容や査読の質、編集体制などが評価・保証されていることを意味しません。


ISSNの役割は、あくまで出版物を識別することです。


したがって、ISSNが付いていることと、ScopusやWeb of Scienceなどのデータベースに収載されていることは別の話です。また、ISSNの有無だけで、そのジャーナルが投稿先として信頼できるかどうかを判断することもできません。


これはDOIについても同様です。DOIやISSNは、対象を正確に識別するための仕組みであり、内容の品質を評価するための指標ではありません。



ISSNはどこで確認できる?


ISSNは、多くの場合、ジャーナルの公式Webサイトで確認できます。


より詳しく調べたい場合には、ISSN International Centreが運営する「ISSN Portal」や、国立国会図書館が提供する書誌情報などから確認できます。日本の学術資料であれば、CiNii ResearchなどでISSNを使って検索することもできます。


このとき、番号が存在するかどうかだけでなく、そのISSNに登録されているタイトルや媒体が、確認したいジャーナルと一致しているかを見ることが重要です。


ちなみに、ISSNの8桁目は入力ミスなどを検出するための「チェックディジット」です。計算結果によっては数字ではなく「X」が使われることもあります。そのため、「1234-567X」のようなISSNがあっても誤記ではありません。



まとめ


ISSNは、学術ジャーナルをはじめとする継続資料を識別するための国際標準番号です。


DOI、ISBN、ISSNはいずれも出版物や学術情報を識別するために使われますが、識別する対象や役割は異なります。またISSNでは、タイトルだけでなく媒体も区別されるため、同じジャーナルでも印刷版とオンライン版で異なる番号が付与されることがあります。


普段はジャーナルサイトの片隅に表示されている8桁の番号ですが、その背後には、出版物を正確に識別し、図書館やデータベースなどで同じ資料を結びつけるための仕組みがあります。


次に学術ジャーナルのWebサイトを見る機会があれば、ISSNがどこに表示されているか、少しだけ注目してみてはいかがでしょうか。


「いまさら聞けない学術出版用語」では、学術出版でよく使われる用語を、言葉の意味だけでなく、その仕組みや研究者との関わりから解説します。



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