いまさら聞けない学術出版用語:DOAJとは? ScopusやWeb of Scienceとは何が違うのか

学術論文の投稿先を検討するとき、ジャーナルのウェブサイトなどで「Indexed in DOAJ(DOAJ収載)」「Indexed in Scopus(Scopus収載)」「Indexed in Web of Science(Web of Science収載)」といったような表記を見かけることがあります。いずれも学術ジャーナルの収載先を示していますが、それぞれのサービスは目的や収載基準が異なっています。
今回は、オープンアクセス(OA)ジャーナルの情報を提供するDOAJを中心に、Scopusや
Web of Scienceとの違いや、ジャーナルを調べる際の活用方法を紹介します。
DOAJとは?
DOAJはDirectory of Open Access Journalsの略称で、査読付きOAジャーナルの情報を提供する、独立したディレクトリです。学術分野や出版国、使用言語を問わず、一定の基準を満たしたOAジャーナルを収載しています。
DOAJは非営利組織によって運営されており、誰でも無料で利用できます。研究者が投稿先を調べたり、大学図書館員がOAジャーナルに関する情報を確認したりする際に役立つサービスです。
DOAJの特徴は、ジャーナルの名称や出版分野だけでなく、査読方式、著作権、ライセンス、論文掲載料(APC)など、OA出版に関する情報をまとめて確認できることです。
また、収載ジャーナルに加え、出版社から提供された論文単位のメタデータも検索できます。ただし、すべての収載ジャーナルが論文メタデータを提供しているわけではありません。
DOAJにはどのようなジャーナルが収載される?
DOAJには、OAジャーナルであれば自動的に収載されるわけではありません。ジャーナル側からの申請に基づいて審査が行われ、所定の基準を満たしたものが登録されます。
DOAJが定める主な収載要件には、以下のようなものがあります。
オープンアクセス: 論文全文が公開直後から無料で利用でき、適切なオープンライセンスが設定されていること。
査読・編集体制: 査読を含む品質管理の仕組みがあり、編集委員会の構成や査読方式が公開されていること。
出版情報の透明性: 投稿規定、著作権、ライセンス、APCなどの情報が明示されていること。
継続的な出版活動: 学術研究を継続して出版していること。新規ジャーナルについても、一定の出版実績が必要とされます。
査読については、原則として各論文を少なくとも2名の独立した査読者が審査することを求めています。ただし、人文・芸術分野のジャーナルについては例外が設けられており、外部査読に代えて、2名以上の編集者による審査を行う方式も認められています。
DOAJの審査では、単に論文が無料で読めるかどうかだけでなく、ジャーナルの編集・出版方針が明確に示されているかも確認されます。
ScopusやWeb of Scienceとは何が違う?
DOAJと並んでよく知られているのが、ScopusとWeb of Scienceです。いずれも学術情報を検索できるサービスですが、DOAJとは主な目的が異なります。
ScopusはElsevierが提供する学術文献の抄録・引用データベースです。学術論文の検索に加え、引用情報を用いた研究動向の調査や、著者・研究機関などの分析にも利用されています。
Web of ScienceはClarivateが提供する学術情報プラットフォームで、引用関係をたどった文献検索や研究分析などに使用されます。中核となるWeb of Science Core Collectionでは、ジャーナル、会議録、書籍などを対象とする索引が提供されています。
三者の主な違いを整理すると、次のようになります。
比較項目 | DOAJ | Scopus | Web of Science |
主な目的 | OAジャーナルの情報提供 | 学術文献の検索・引用分析 | 学術文献の検索・引用分析 |
主な収載対象 | OAジャーナル | OA・購読型を含む学術出版物 | OA・購読型を含む学術出版物 |
運営 | 独立した非営利組織 | Elsevier | Clarivate |
利用料金 | 無料 | 原則として契約が必要 | 原則として契約が必要 |
主な用途 | OA方針、ライセンス、出版費用などの確認 | 文献検索、引用分析、研究動向の把握 | 文献検索、引用分析、研究動向の把握 |
Scopusでは、独立した専門家委員会であるContent Selection and Advisory Board(CSAB)がジャーナルの収載審査を行っています。一方、Web of Science Core Collectionでは、Clarivateの専門編集者が品質に関する24項目と影響力に関する4項目、合計28項目の基準を用いてジャーナルを評価しています。
このように、三者にはそれぞれ収載基準がありますが、目的は同じではありません。DOAJはOA出版に関する情報を調べることに適しており、ScopusとWeb of Scienceは、学術文献の検索や引用関係の分析に重点を置いています。
なお、一つのジャーナルがDOAJ、Scopus、Web of Scienceのすべてに収載されている場合もあります。三者は互いに排他的なものではありません。
DOAJを実際に使ってみよう
DOAJサイトから、名称やISSNなどを使ってジャーナルを検索できます。

例えば、投稿先として検討しているジャーナルの名称を入力して検索すると、該当するジャーナルが収載されているかどうかを確認できます。
検索結果からジャーナルを選ぶと、詳細情報が表示されます。ここでは、ジャーナルの出版元や対象分野に加えて、査読方式、使用されているライセンス、APCの有無や金額などを確認できます。

これらの情報は、研究者が投稿先を比較する際にも、大学図書館員が研究者から相談を受けた際にも参考になります。
ただし、DOAJに掲載されている情報は、申請時やその後の更新時に提供されたものです。APCや投稿規定などは変更されることがあるため、投稿前には必ずジャーナルの公式サイトで最新情報を確認してください。
DOAJに収載されていれば、そのジャーナルは信頼できる?
DOAJには収載審査があるため、登録されていることは、そのジャーナルが一定の編集・出版基準を満たしていると判断されたことを意味します。
ただし、DOAJへの収載が、個々の掲載論文の研究内容や正確性まで保証するわけではありません。また、ジャーナルの収載状況は、その後の運営状況や基準への適合状況によって変わる可能性があります。
反対に、DOAJに収載されていないことだけを理由に、そのジャーナルを信頼できないと判断することもできません。新しく創刊されたジャーナルや、まだDOAJへの申請を行っていないジャーナルなどもあるためです。
これはScopusやWeb of Scienceについても同様です。データベースへの収載状況はジャーナルを調べる際の重要な情報ですが、それだけでジャーナルや個々の論文の品質を判断することはできません。
投稿先を検討する際には、収載状況に加えて、ジャーナルの対象分野、編集体制、査読方針、出版費用などを総合的に確認することが大切です。
まとめ
DOAJ、Scopus、Web of Scienceはいずれも学術ジャーナルの情報を調べる際に役立つサービスですが、それぞれ目的や特徴が異なります。
DOAJでは、OAジャーナルの出版方針やライセンス、APCなどの情報を無料で確認できます。一方、ScopusやWeb of Scienceは、学術文献の検索や引用分析など、より幅広い用途で利用されています。
それぞれの特徴を理解して使い分けることで、ジャーナルの情報をより適切に調べられるようになります。特にOAジャーナルへの投稿を検討する際には、DOAJも情報源の一つとして活用してみてはいかがでしょうか。


