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いまさら聞けない学術出版用語:CRediTとは? 論文の「誰が何をしたか」を示す仕組み

10 時間前
読了時間: 7分


学術論文では、複数の著者が名を連ねることが一般的です。しかし、著者名とその掲載順だけを見ても、それぞれの研究者がどのような役割を担ったのかはわかりません。


研究の構想や実験、データの分析、ソフトウェアの開発、論文の執筆など、一つの論文が完成するまでにはさまざまな作業が必要です。これらを複数の研究者が分担することも珍しくありません。


研究へのさまざまな貢献を共通の用語で明示する仕組みが、CRediTです。今回は、CRediTの概要や14種類の役割、実際の論文での記載方法を紹介するとともに、著者資格との違いについて解説します。



CRediTとは?


CRediTはContributor Roles Taxonomyの略称で、研究成果への貢献を14種類の役割に分類して記述する仕組みです。研究者がそれぞれどのような仕事を担当したのかを明確にし、研究への貢献を把握しやすくすることを目的としています。


CRediTは2022年に米国の規格(ANSI/NISO Z39.104-2022)として制定されました。現在では、MDPIを含む多くの学術出版社で採用されています。


CRediTでは、一人の研究者に複数の役割を割り当てることができ、一つの役割を複数人が担当することもできます。また、必要に応じてLead(主導)、Equal(同等)、Supporting(補助)という区分で、貢献の程度を示すことも可能です。ただし、すべての出版社がこれらの区分を使用しているわけではありません。



CRediTの14種類の役割


CRediTでは、研究への貢献を次の14種類に分類しています。

役割

内容

Conceptualization

研究課題や目的の構想・立案

Methodology

研究方法の設計・開発

Software

ソフトウェアの開発・実装

Validation

結果や実験の再現性の検証

Formal analysis

統計的・数学的手法などによる分析

Investigation

実験、調査、データ収集などの実施

Resources

研究資料、試料、機器などの提供

Data curation

研究データの整理・管理

Writing – original draft

論文の初稿執筆

Writing – review & editing

論文の批判的検討、修正・編集

Visualization

図表などによる研究成果の可視化

Supervision

研究活動の指導・監督

Project administration

研究プロジェクトの運営・調整

Funding acquisition

研究資金の獲得


※日本語の説明はCRediTの公式定義をもとに簡略化したものです。


例えば、Investigationは実験や調査などを実施する役割ですが、Data curationは研究データを整理・管理し、利用や再利用に適した状態に整える役割です。


また、論文の執筆についても、初稿の作成を担当するWriting – original draftと、論文の内容を検討し修正するWriting – review & editingが区別されています。なお、Writing – original draftには、実質的な翻訳作業も含まれます。


CRediTを利用すると、論文の執筆以外にも多様な研究活動があることや、それぞれの活動に誰が関わったのかを具体的に示せます。



実際の論文ではどのように記載される?


MDPIでは、研究論文のAuthor Contributions(著者貢献)の欄に、CRediTに基づいた各著者の役割を記載しています。


例えば、3名の著者による研究の場合、次のような記載が考えられます。


Author Contributionsの記載例

Conceptualization, A.S.; methodology, A.S. and B.T.; investigation, B.T.; formal analysis, B.T.; data curation, C.Y.; visualization, C.Y.; writing—original draft preparation, C.Y.; writing—review and editing, A.S., B.T. and C.Y.; supervision, A.S. All authors have read and agreed to the published version of the manuscript.

※説明用に作成した架空の例です。


この例では、A.S.が研究の構想や指導を担当し、B.T.が実験と分析を行っています。C.Y.は研究データの整理や図表の作成に加えて、論文の初稿執筆を担当しました。論文の確認と修正には3名全員が関わっています。


MDPIの書式では、役割ごとに著者のイニシャルを記載し、セミコロンで区切ります。また、CRediTの正式名称と一部表記が異なり、例えばWriting – original draftはwriting—original draft preparationと記載されます。


末尾の「All authors have read and agreed to the published version of the manuscript.」は、すべての著者が出版される論文の最終版を確認し、承認したことを示す定型文です。


なお、Author Contributionsは論文本文の後に置かれるバックマターの一項目です。バックマターには、研究資金、データ利用可能性、利益相反などに関する情報も記載されます。詳しくは、MDPI本社ブログのBack Matter in Research Articles: A Guide for Authors(英文記事)をご参照ください。



CRediTと著者資格はどう違う?


ここで注意したいのは、CRediTは研究への貢献を記述する仕組みであり、論文の著者資格を決定する基準ではないということです。


MDPIでは、著者資格について国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)の基準を採用しています。ICMJEでは、論文の著者として認められるために、以下の4条件すべてを満たすことを求めています。


  1. 研究の構想・設計、またはデータの取得・分析・解釈に実質的に貢献していること。

  2. 論文を執筆するか、重要な知的内容について批判的に修正していること。

  3. 出版される論文の最終版を承認していること。

  4. 研究のあらゆる側面について説明責任を負い、正確性や公正性に関する疑問が適切に調査・解決されるようにすることに同意していること。


例えば、先ほどの研究チームに、研究資金の獲得だけを担当したD氏がいたとします。


資金の獲得は、CRediTではFunding acquisitionという重要な役割の一つです。しかし、D氏が研究内容や論文の作成などに関わっておらず、ICMJEの著者資格基準を満たしていなければ、著者として記載することは適切ではありません。このような場合には、本人の了承を得たうえで、Acknowledgments(謝辞)に貢献を記載することが考えられます。


一方、記載例のC.Y.が著者として記載されているのは、データの整理や図表の作成にとどまらず、データの解釈などに実質的に関わり、ほかの条件も満たしているという前提によるものです。ただし、Author Contributions欄に並ぶ役割名だけから、そこまで読み取ることはできません。


つまり、CRediTの役割名とICMJEの著者資格基準は、一対一に対応するものではありません。


著者資格の問題は、日本でも研究公正の観点から重要視されています。日本学術振興会(JSPS)の研究倫理教育教材『科学の健全な発展のために[第2版]―誠実な科学者の心得―』でも、適切なオーサーシップが研究倫理上の重要な課題として扱われています。


著者資格のない人を著者に加えるギフト・オーサーシップや、本来著者となるべき人を著者から除外するゴースト・オーサーシップなどは、不適切なオーサーシップの例です。


CRediTを使用したからといって、こうした問題を自動的に防げるわけではありません。しかし、研究チーム内で誰が何を担当したのかを確認し、その内容を明示することは、著者資格について話し合う際の手がかりになるかもしれません。



CRediTは何に役立つのか


CRediTの利点の一つは、著者一覧だけでは見えにくかった研究への貢献を明確にできることです。


例えば、データの整理・管理やソフトウェア開発などは、研究成果を生み出すうえで重要な活動ですが、著者名やその掲載順だけでは、誰が担当したのかを把握することは困難です。


CRediTを利用すれば、こうした役割も共通の形式で記述できます。研究者自身の活動を説明する際にも、研究機関が研究者の貢献を把握する際にも、参考となる情報です。


また、CRediTの情報は、論文本文に記載するだけでなく、JATS XMLなどを通じて機械可読なメタデータとして記録することも可能です。これにより、著者ごとの研究貢献を検索・分析する仕組みにも活用できます。


ただし、CRediTの役割は基本的に研究チーム側の申告に基づくものであり、その記載だけで実際の貢献の質や程度が保証されるわけではありません。また、14種類の役割が、すべての研究分野における貢献を過不足なく表現できるとも限りません。


CRediTは研究評価にも利用できる情報を提供しますが、役割の数や種類だけで個々の研究者の貢献度を数値化したり、順位づけたりすることは適切ではありません。



まとめ


CRediTは、研究成果への貢献を14種類の役割で記述する仕組みです。著者一覧だけではわかりにくい研究の役割分担を明示し、誰がどのような仕事を担当したのかを把握しやすくします。


一方で、CRediTは著者資格を判定する基準でも、研究者の貢献度を評価する制度でもありません。


学術論文を読む際には、著者一覧とともにAuthor Contributions欄にも目を向けてみてください。研究成果がどのような役割分担によって生み出されたのか、より詳しく理解できるでしょう。


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