知っておきたい研究上の盗用の種類と防ぎ方

(※本記事はmdpi.comの英文ブログ記事「Types of Plagiarism in Research: From Copy-and-Paste to Mosaic Plagiarism」を翻訳したものです)
今ほど情報が手に入りやすい時代はありません。インターネットの普及やオープンアクセス(OA)の広がりによって、研究成果は世界中の読者に無料で、すぐに届くようになりました。
一方で、アクセスが広がったことで、学術界、とりわけ学術出版の分野では、さまざまな形の盗用が目につくようになっています。研究者は数回クリックするだけで多様な研究資料に当たれます。検索結果にAIによる要約が表示される現在では、複数の情報源の内容を瞬時にまとめて再利用することもできます。読者には独自の主張に見えても、実は「パッチライティング」や、単なるコピー&ペーストでできた文章かもしれません。
データや画像、論文全体、あるいは本文の一部の重複を理由に撤回される論文は増え続けています。この現象が目立ってきたのはここ20年ほどのことで、情報へのアクセスが急速に容易になったことと盗用の増加とは無関係ではないと考えられます。
さらに、「出版か死か(publish or perish)」と言われる業績重視の風潮のなかで、出版の要求に応えようと自分の研究を使い回す「自己盗用」も起こりやすくなっています。
盗用の種類
盗用の発見や防止が難しいのは、その形が多岐にわたるためでもあります。研究における主な盗用には、次のようなものがあります。
直接的な盗用(逐語的盗用)
モザイク盗用とパッチライティング
出典を示さない言い換え
アイデア・データの盗用
画像・図表の盗用
自己盗用
直接的な盗用(逐語的盗用)
直接的な盗用は、最も見つけやすい盗用です。他の著者の文章を一字一句そのままコピー&ペーストするもので、明白な研究不正にあたります。
ただし、引用符で囲むことや、本文中に出典を示して参考文献リストに挙げることを忘れ、意図せず盗用になってしまう場合もあります。他の著者の文章をそのまま論文に取り入れる場合は、該当する引用のルールに正しく従ってください。
モザイク盗用・パッチライティング
モザイク盗用やパッチライティングは、他の著者の文章から語句や一部分を抜き出し、1、2語を同義語に置き換える程度の手直しだけで使うものです。
これを避けるには、他の著者の考えを自分のなかで消化する時間を取ってください。元の資料を横に置いたまま書くのは、なるべく避けましょう。その考えが自分の主張を支えるのか、それとも対立するのかを検討し、必要に応じて元の文章とは異なる角度から論じるようにします。
出典を示さない言い換え
著作権で保護されるのは言葉の並びですが、研究倫理の上では、著者のアイデアもその人固有の知的財産として尊重されるべきものです。
出典を示さない言い換えとは、他の著者のアイデアを、その出典に触れずに自分の言葉で書くことです。表現を変えた場合でも、研究公正に反しないよう、元の著者を必ず引用してください。
アイデア・データの盗用
アイデア・データの盗用とは、他の著者の仮説や生データを、許可を得ないまま、あるいは出典を明示しないまま自分の研究に使うことです。
論文で他者のデータを利用する際は、著者とデータセットの両方を必ず明示して引用してください。
画像・図表の盗用
言葉やアイデアだけでなく、画像や図表も著作権で保護されています。画像・図表の盗用とは、他者の画像や図表を許可なく使うことです。
パブリックドメインに属さない既刊資料を転載する場合は、許諾を得なければなりません。許諾は、著者自身が著作権者に申請してください。
(訳注:CC BYライセンスの資料は、出典を示せば許諾は不要です。詳しくは「MDPI掲載論文の著作権とクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス」をご覧ください)
自己盗用
自己盗用とは、自分の過去の出版物の一部を流用・再利用して、別の論文を作ることです。出版し続けなければならないというプレッシャーから、自己盗用に頼ってしまう著者もいます。
自分の既発表論文に言及すること自体は問題ありません。ただし、新しい論文の構成や論旨は独自のものでなければなりません。独自の研究成果を積み重ねるには、時間をかけてよく考えることが欠かせません。出版のために新規性や信頼性を犠牲にすることがあってはなりません。
類似度チェックソフトウェアで検出できる盗用・できない盗用
デジタル化が進み、情報が手に入りやすくなるとともに盗用も増えてきました。これに対処するため、さまざまなデジタルツールが開発されています。
類似度チェックソフトウェア(テキスト照合ソフトウェア、盗用チェックソフトウェアとも呼ばれます)は、論文をスキャンし、既刊の学術資料を集めた膨大なデータベースと照合して、一致する文章を特定するツールです。業界標準としては、TurnitinやiThenticateが使われています。
類似度チェックソフトウェアで一般に検出できるもの:
直接的な盗用(逐語的盗用)
モザイク盗用・パッチライティング
正しい形式の引用、誤った形式の引用
自己盗用
AI生成コンテンツ(別の機能との併用による)
一般に検出できないもの:
元の文章がわからなくなるほど大きく言い換えたもの
データベースに索引登録されていない資料や紙媒体のみの資料(ライセンスで保護されている場合もあります)
アイデア、仮説、データの盗用
捏造された画像・図表
盗用の疑いがある箇所について、著者がどのような意図を持っていたか
盗用がもたらす結果と予防
学術出版で盗用が発覚した場合にどうなるかは、盗用の種類や程度によって異なります。主なものとして、次が挙げられます。
キャリアへの打撃:失職、研究資金の喪失、後年になってからの学術賞の取り消しなど
評判の失墜:社会や分野内での信頼の喪失、論文の撤回、機関によるブラックリスト入りなど
法的措置:著作権侵害訴訟や罰金など
盗用とそれに伴う処分を防げるかどうかは、日頃の執筆や研究の進め方にかかっています。
他の文献の引用やAI利用の明示については該当するガイドラインに従ってください。また、他の著者のアイデアに言及したり、自分の主張に取り入れたりする際は、どのような形が最も適切かを常に考えましょう。
とはいえ、すべての盗用が意図的なものとは限りません。MDPIのAuthor Services(著者向けサービス)では、サービスの一環として盗用チェックを行っています。
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