インタビュー:東京工科大学・浦瀬太郎先生(Resources誌優秀査読者賞)
- 5 日前
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MDPIは、迅速な出版プロセスを実現する一方で、科学的厳密さと研究の信頼性を重視しています。その両立を可能にしているのが、日々誠実に査読に取り組んでくださる査読者の皆さまのご協力です。
MDPIの「優秀査読者賞(Outstanding Reviewer Award)」は、投稿された論文に丁寧に目を通し、徹底した専門的評価を行いながらも、迅速なフィードバックを提供してくださった査読者に贈られる、各ジャーナル年次の表彰制度です。前年度にご活躍いただいた査読者の中から、特に顕著な貢献を示された方が選出されます。
今回は、Resources誌にて2025年度の優秀査読者賞を受賞された、東京工科大学 応用生物学部・教授の浦瀬太郎先生にお話を伺いました。
1. このたびResourcesのOutstanding Reviewer Awardを受賞されたご感想をお聞かせください。また、同誌ではこれまで、主にどのような分野の論文を査読されてきましたか。
査読の仕事は研究コミュニティーを維持していくのに欠かせない活動で、その活動を評価いただき大変ありがたいです。Resources誌では、水資源や農業資源に関する論文を査読してきました。私の専門分野は,水を中心とした環境分野であり、化学、微生物学、土木工学、医学、薬学など伝統ある各分野の境界領域です。
境界領域の特徴として、必ずしも特定の雑誌から査読依頼があるのではなく、MDPIの出版物としては、Resources誌に限らず、ほかに、Water, Environments, Microorganisms, Toxicsの各誌など、いくつかの雑誌からの査読依頼をお引き受けしています。
2. 先生の研究室では、膜分離技術や微生物を用いた廃水処理、薬剤耐性菌、マイクロプラスチック、バイオプラスチックなど、幅広いテーマに取り組まれています。現在、特に注目している研究課題と、その理由を教えてください。
水環境における微生物学が研究の中心で、どの研究テーマもそこから派生した研究です。薬剤耐性菌は,もちろんそれをヒトが摂取した場合の健康リスクとしても大切な問題ですが、もともとヒトから排出されたものが環境で生残している側面が強く、集団としてのヒトの健康を水環境の薬剤耐性菌からとらえるという視点を大切にしています。マイクロプラスチックについても水環境にプラスチックが入ったあとの分解への微生物の寄与という視点で研究を進めています。
3. 水は生活や産業に欠かせない資源である一方、利用後には排水として処理する必要があります。水を安全に利用し、循環させていくうえで、現在の水処理技術にはどのような課題があるとお考えですか。
上水、下水、産業用水、産業排水とさまざまな分野が水処理にはありますが、処理の規模が大きいことが多く、コスト面を考えると,適用可能な技術のメニューは案外限られたものになります。一方で,場所ごとに水処理施設に求められる要件が異なり、マイクロプラスチック,有機フッ素系化合物(PFAS)など新たに問題となっている課題も多くあります。研究レベルの新技術以外に、技術者による工夫が多かった分野ですが、こうした経験知をAIなどによる自動制御に置き換え可能なのか、気になります。
4. マイクロプラスチックや薬剤耐性菌など、水環境における新たな問題について、実態を把握し、リスクを科学的に評価する際には、どのような難しさがありますか。
これは、多くの環境分野の研究者が悩んでいる問題です。小さなリスクを大きく煽るのはよくないです。逆に、マイクロプラスチックや薬剤耐性菌など新規に問題となっている汚染に関して、生涯健康リスクを寡少として無視することもできないと思います。出口がない研究と見られることも多いですが、モニタリングを含め、地道な研究が推進されてよいと思います。
5. 資源利用、水処理、廃棄物、環境影響などに関する論文を査読する際、研究方法、データの解釈、技術の実用可能性などについて、特に重視されている点を教えてください。
「結果」にはどの研究者も力が入りますが、案外手が抜かれているのが、「方法」の部分です。「方法」は実施された研究の再現性を担保するために必須の部分で、また、あとに続く研究者が最も参考にする部分です。査読の際にも「方法」の部分に不明点があれば、指摘することが多いです。「技術の実用可能性」は,厳しく査読で問うことはありませんが、ゆるく考え過ぎると、「少し違う材料」で「少し違う対象」にアプローチすれば、その掛け算の数だけの論文が量産されます。査読の際には「この材料」を「この対象」に用いる必然性をはっきり書くよう指摘することが多いです。
6. 廃水や使用済みプラスチックなど、従来は処理や廃棄の対象とされてきたものを、再び資源として活用する研究が進んでいます。資源循環を実社会で進めるために、研究者や学術論文にはどのような役割が求められるとお考えですか。また、この分野を目指す若手研究者への助言もお願いいたします。
資源の循環には、経済がかかわっています。原油価格20ドル/バレル以下の時代がながく続き、その時代に「無理」と結論づけられた資源循環技術がたくさんあります。いまの原油価格高騰の時代に再評価すれば、異なる結果となる技術もありそうです。現在の経済状況で社会実装できる技術も大切ですが、学術論文には、もう少し長期での役割を与えておきたいです。学術論文では、「深く考える」ことが重要だと思うし、査読者としても、「深く考えた」ことが論文原稿や修正のやり取りから理解できれば、高く評価したいと考えています。
