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知っておきたい研究公正と出版倫理の基本用語

  • 6月25日
  • 読了時間: 12分



(※本記事はmdpi.comの英文ブログ記事「Understanding Essential Research Integrity and Publication Ethics Terminology」を翻訳したものです)


学術情報の信頼性を保つことは、MDPIの出版活動の根幹をなしています。


科学文献の質と信頼性を支えるには、学術出版において最も高い倫理基準を支える、厳格な方針と実務の積み重ねが欠かせません。


研究倫理と出版倫理は幅広い原則からなり、学術情報の信頼性を守るうえでは、そのいずれもが等しく重要です。用語の意味を正しく理解することは、倫理的な姿勢を保つための第一歩といえます。


この記事では、研究公正と出版倫理の主要なテーマを概観し、MDPIがそれぞれの課題にどう取り組んでいるか、そして著者が心がけたい実践のポイントを紹介します。

下記目次の各項目から、対応するセクションに移動できます。




盗用(Plagiarism)


盗用とは、他者の文章・アイデア・画像・データを、許可や出典の明示なしに使うことを指します。自分自身が過去に発表した内容であっても、出典を示さずに使えば盗用にあたります。


何が盗用にあたるのか、どうすれば防げるのかを理解しておくことは、高い倫理基準を保つうえで欠かせません。


MDPIの取り組み


盗用はMDPIのジャーナルでは認められておらず、研究倫理・出版倫理ガイドラインに対する重大な違反とみなされます。


MDPIのジャーナルに投稿されたすべての論文は、厳格で透明性の高い査読プロセスを経ます。その一環として、業界標準のソフトウェアであるiThenticateを用いて投稿論文をチェックしています。


査読の過程で盗用が確認された場合、その論文はリジェクトされることがあります。


著者が心がけたいこと


盗用は、適切な引用の作法を守ることで容易に防げます。たとえば次のような点です。


  • 引用した文章は引用符で囲み、出典を明示する

  • 言い換える(パラフレーズする)場合も、元の出典を必ず示す

  • 素材を再利用する際は、あらかじめ許可を得る


盗用が疑われる場合は、根拠となる資料を添えて出版社に連絡してください。

MDPIの盗用に関する方針もあわせてご覧ください。



画像操作(Image manipulation)


画像操作は、学術研究の信頼性を脅かす深刻な問題です。


出版規範委員会(COPE)は、画像操作を「元画像(たとえば顕微鏡写真の図など)に対する選択的な編集や、あらゆる変更」と定義しています。


画像ファイルは、画像の解釈を誤らせ、研究の正確さを損なうおそれのある形で、いかなる加工や調整も行ってはなりません。


不適切な画像操作には、次のようなものがあります。


  • クローニング(複製による貼り付け)

  • スプライシング(つなぎ合わせ)

  • 消去

  • 重複


これらは、コントラストの過度な調整やトリミングといった追加の加工の有無にかかわらず、不適切とみなされる点に注意が必要です。


MDPIの取り組み


MDPIの出版倫理の柱の一つが「予防」、すなわち倫理上の問題を早い段階で見つけ出すことです。

人の専門的な判断に新たなAIツールを組み合わせることで、MDPIは編集プロセス全体の効率・品質・一貫性をさらに高めています。


MDPIは画像チェックツールProofig AIと提携し、投稿論文を確認して、画像の重複・操作・盗用にあたる箇所を個別に検出しています。


Proofig AIが対象ジャーナルで効率と一貫性の維持にどう役立っているかについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。



利益相反(Conflicts of Interest)


利益相反とは、報告された研究の提示や解釈に影響を与えていると受け取られかねない、個人的な事情や利害関係を指します。


実際に利益相反が存在する場合と同様に、それがあると受け取られること自体も、科学への信頼を損ないかねません。


MDPIの取り組み


MDPIのジャーナルに投稿するすべての論文には、必要事項を記入した利益相反に関する記載を、巻末情報(back matter)に含める必要があります。


MDPIは、ダウンロードして記入し、投稿時に簡単にアップロードできる標準の開示フォームを用意しています。記入した内容は、巻末の利益相反に関する記載に反映されます。


著者が心がけたいこと


著者は、自らの研究に不適切な影響や偏りを与えうるすべての関係や利害を開示しなければなりません。利益相反においては、透明性と誠実さが何よりも重要です。


利益相反の記載にあたっては、次の点を確認してください。


  • 金銭的な利害をすべて申告する

  • 金銭以外の利害についても検討する

  • 研究に影響を与えうるものは申告し、透明性を確保する


金銭的な利害には、団体への所属、雇用関係、コンサルティング、株式の保有、謝礼やその他の資金の受領などが含まれます。


一方、金銭以外の利害には、個人的・職業的な関係、研究に関わる競合する利害、さらには研究に影響しうる個人的な信条などが含まれます。


医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、利益相反の開示方法について詳しい指針を示しています。申告すべき利益相反がない場合も、その旨を開示フォームに明記してください


他者の研究で利益相反の可能性に気づいた場合は、根拠となる資料を添えて出版社に知らせていただくよう、MDPIは読者にお願いしています。


MDPIの利益相反への対応も、あわせてご覧ください。



データの改ざん(Data falsification)


研究論文で示されるデータは、すべてオリジナルであり、不適切に操作されていないことが大前提です。


データの改ざんとは、誤った印象を与える目的で、データを不適切に変更・加工・捏造することを指します。さらに、データの一部を除外したり、都合のよい結果だけを選んだり(チェリーピッキング)、特定の結論を支えるために統計手法を意図的に選んだりすることも含まれます。


MDPIの取り組み


MDPIで出版されるすべての論文には、データの入手可能性に関する記載(data availability statement)が必要です。


MDPIは、加工前のデータやメタデータのファイルを、機関のサーバーや、公開されたコミュニティ運営のリポジトリに保存しておくことを著者に推奨しています。


著者が心がけたいこと


オープンデータの実践を取り入れることで、著者は自らの研究への信頼を築き、データの影響力と価値を高められます。

データの改ざんを防ぐための実践には、次のようなものがあります。


  • データ収集の前に、研究計画を事前登録(プレレジストレーション)する

  • すべてのデータ収集プロセスを詳しく記録しておく

  • 加工を行った場合は、その内容を透明性をもって説明する


データの管理・保存の方法については、OpenAIREのガイドラインを参照できます。


また、MDPIの英文記事「Why Open Data is Important」では、FAIRデータ原則を取り上げ、データをオープンにする方法をさらに詳しく解説しています。



インフォームド・コンセント(Informed Consent)


ヘルシンキ宣言は、「自由意思にもとづくインフォームド・コンセントは、個人の自律を尊重するうえで欠かせない要素である」と述べています。

インフォームド・コンセントとは、研究への参加にあたり、その内容(リスクや利益、権利の保護など)を十分に理解したうえで、本人が参加に同意することを求めるものです。


MDPIの確認方法


MDPIは、人を対象とする研究、またはその人のデータや組織サンプルを扱うすべての投稿について、参加に関するインフォームド・コンセントの記載を求めています。


あわせて、同意を得るために用いた未記入のフォームも、投稿時に提出していただく必要があります。


著者が心がけたいこと


研究の参加者、またはその法的代理人には、次の点を説明しなければなりません。


  • 研究の目的と方法

  • 謝礼・利益・リスク

  • プライバシーと秘密の保護

  • 資金源

  • 利益相反の可能性

  • いつでも参加を取りやめられる権利


研究との関連から、本人を特定できる患者情報を共有する必要がある場合は、公表についての同意もあわせて得なければなりません。


人を対象とする研究での同意取得について、こちらの記事でさらに詳しくご覧いただけます。



撤回(Retraction)


撤回は、科学が自らを正していく仕組みの重要な一部です。研究における誠実さ、立て直す力、そして信頼を支えます。


COPEは撤回を次のように定義しています。


「撤回とは、文献を訂正し、内容やデータに重大な欠陥や誤りがあって結論や知見を信頼できない論文があることを、読者に知らせるための仕組みである」


撤回は、著者への罰として捉えるべきものではありません。むしろ、学術情報の信頼性を守るための真摯な取り組みです。


撤回は、次のようなさまざまな理由で行われます。


  • 重大な科学的誤り、またはデータの捏造・改ざんによるもの

  • 適切な出典の明示がない盗用や重複出版

  • 著作権の侵害

  • 非倫理的な研究の報告

  • 査読プロセスが不正に操作された結果としてのみ出版されたもの

  • 開示されていない重大な競合する利害


MDPIの取り組み


重大な欠陥によって研究全体が信頼できないものとなった場合、MDPIはCOPEの撤回ガイドラインに沿って、透明性のある徹底した調査を行います。


その一環として、MDPIは次の点に取り組んでいます。


  • 誤った情報の拡散を最小限に抑えるため、速やかに撤回を公表する

  • 撤回された論文を明確に表示し、対応する撤回通知へリンクする

  • 撤回に至った理由を説明する


論文に誤りが疑われる場合や懸念がある場合は、調査を進められるよう、根拠となる資料を添えてただちに出版社へ知らせていただくよう、MDPIは読者にお願いしています。


撤回が学術情報を正すうえでなぜ重要なのか、こちらの記事でさらに詳しくご覧いただけます。



ペーパーミル(Paper Mill)


ペーパーミルは、科学研究の倫理的な信頼性を脅かし続けています。


United2Actは、ペーパーミルを次のように定義しています。


「ペーパーミルとは、価値の乏しい、あるいは不正な内容や著者情報を含む論文を大量に作成・販売・査読・引用し、学術ジャーナルへの掲載によって利益を得ようとする組織や個人を指す」


ペーパーミルは、あらゆる分野の研究者が標的になりえます。とりわけ、出版への大きなプレッシャーや動機がある場合は注意が必要です。多くの場合、これらの業者から直接連絡があり、話がうますぎる申し出が持ちかけられます。たとえば次のようなものです。


  • 掲載の保証

  • 著者資格や引用の提供

  • すでにアクセプトされた論文


MDPIの取り組み


MDPIは、ペーパーミルに立ち向かう共同の取り組みであるUnited2Actに参加しています。


ペーパーミルの脅威を克服するには、研究者・出版社・学術コミュニティ全体の協力と注意深さが欠かせません。


だからこそ、研究者のみなさんにもできることがあります。ペーパーミルから勧誘を受けたら、その申し出で名前を使われている出版社に知らせてください。


できるだけ早く出版社に知らせることが、不正な業者に立ち向かい、研究公正を守る力になります。



重複出版(Redundant Publication)


重複出版とは、すでに別の場所で公表されたものと内容が大きく重なる出版を指します。

COPEは、重複が生じる場合を次のように説明しています。


「すでに公表された著作(またはそのかなりの部分)が、出典の適切な明示・相互参照・正当な理由・許可のないまま、(同一または別の言語で)複数回公表される場合」


過去の研究成果を再利用したい場合や、論文の翻訳を公表したい場合も、倫理的な作法を守ることが欠かせません。


MDPIの取り組み


重複出版の問題に対応するため、MDPIは、著者や編集委員が重複出版を正しく見分け、研究公正を保てるよう、厳格なガイドラインを示すことが重要だと考えています。


MDPIは、重複(二重)出版に関するCOPEの指針に従っています。MDPIの研究倫理・出版倫理のページでも、翻訳やプレプリントの扱いについて明確な方針を示しています。


著者が心がけたいこと


著者は、透明性を保ち、正しく出典を示すことで、既存の文献の再利用を適切に申告し、その理由を説明しなければなりません。MDPIは著者に次の点を推奨しています。


  • 過去の出版との重複があれば申告し、その理由を説明する

  • 元の出典を必ず示す

  • 著作権の条件を確認し、文章・図・表・データを再利用する許可を得ておく

  • 翻訳である場合は、その旨を明確に示す


重複出版に気づいた場合は、根拠となる資料を添えて出版社に知らせてください。



引用カルテル(Citation Cartel)


COPEは引用カルテルを次のように定義しています。


「互いを引用し合うように組まれたネットワークであり、引用の積み増しによって引用数・インパクトファクター(IF)・h-indexを不自然に押し上げ、評価のプロセスを誤らせ、学術出版の信頼性を損なうもの」


なお、自ら進んで意図的にこの行為に加わる著者がいる一方で、特定の引用を含めるよう強いられ、引用カルテルの標的になっていると気づかないままの著者もいる点に注意が必要です。


いずれにせよ、引用カルテルは学術出版にとって深刻な懸念であり、研究者は適切な引用の作法を保つよう努めるべきです。


MDPIの取り組み


MDPIは編集プロセスへの投資を続けており、人の専門性を土台に、問題のおそれがある参考文献へ編集者を導くAIツール「Cite Lens」を開発しました。Cite Lensは、投稿論文に潜む問題の可能性を専門家に知らせます。


投稿の前に、著者はすべての引用が適切で正確かどうかを確認してください。


著者が心がけたいこと


引用カルテルに利用されたり、加担したりしないよう、著者は次のような追加の注意を払えます。


  • 指標を上げるためだけに、特定の個人やジャーナルの引用を過度に含めない

  • 査読者や編集者から勧められた引用も、慎重に検討する

  • 自らの研究に関連する文献だけを引用する


ジャーナルの引用方針を必ず確認し、不正が疑われる場合はそのジャーナルの出版倫理チームに報告してください。


MDPIが問題のある引用にどう向き合っているか、こちらの記事でさらに詳しくご覧いただけます。



サラミ出版(Salami Slicing)


サラミ出版は、個人の出版指標を水増しするもので、COPEは次のように定義しています。


「一つの研究を、出版可能な最小単位(スライス)へと分割することであり、各スライスは通常、同じ研究課題・仮説・対象集団・方法を共有しながら、それぞれの出版が知見の一部だけを報告するもの」


サラミ出版は、各スライスがあたかも異なる対象を扱った独立の研究であるかのような誤った印象を生み出すため、学術情報の信頼性に関わる重要な問題となります。


MDPIの取り組み


重複した内容への対応について、MDPIはCOPEのガイドラインに完全に沿っています。文章やデータの重なりの程度に応じて、訂正または撤回が行われることがあります。


著者が心がけたいこと


サラミ出版を避けるための実践には、次のようなものがあります。


  • 研究は包括的に報告することを優先し、複数の論文に分割しない

  • 公表済み、または公表を予定している論文との重なりがあれば編集者に開示する

  • 同じデータ・対象集団・方法を用いた出版を引用する



研究公正と出版倫理へのMDPIの取り組み


30年以上にわたりオープンアクセス学術出版社の先駆けとして歩んできたMDPIは、研究公正と出版倫理において最も高い基準を保つことの重要性を深く理解しています。


MDPIの研究倫理・出版倫理に関する方針の全文はこちらからご覧いただけます。


また、この記事で取り上げたテーマに関する他のブログ記事もこちらからお読みいただけます。

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