MDPIの若手研究者支援制度~ジャーナルアワードプログラム

(※本記事はmdpi.comの英文ブログ記事「Empowering Early Career Researchers Through MDPI’s Journal Awards」を翻訳したものです)
オープンアクセス学術出版社として、MDPIは拡大を続ける学術コミュニティの支援に取り組んできました。なかでも早期キャリア研究者(ECR:Early Career Researcher)は、この支援をもっとも活かしやすい層といえるかもしれません。
キャリアの初期段階には、その時期に特有の難しさがあります。自分の研究をどう知ってもらうか、成果をどう評価につなげるか、研究者どうしのネットワークをどう築くか-いずれも一朝一夕には進まないものです。
MDPIはアワードプログラム(表彰制度)を通じて、若手研究者が評価を得られる機会をつくることを目指しています。ジャーナルアワードは数多く設置されていますが、その中でも、以下の3つは特にキャリア初期の研究者を念頭に置き設計されたものです。
本記事では、3アワードの内容と応募要件を紹介します。
Best PhD Thesis Award(最優秀博士論文賞)
博士課程の学生にとって、博士論文は学位取得に向けた研究の到達点であり、学部時代から続けてきた学びの総仕上げでもあります。論文を書き上げた時点から、研究者としてのキャリアが本格的に始まります。
早い段階で成果が評価されると、研究が知られる機会が増え、その後の活動を進めやすくなることがあります。
MDPI Best PhD Thesis Awardは、優れた博士論文を表彰するアワードです。専門分野に大きく貢献しうる研究者を、早い時期に広く知ってもらうことを目的としています。
選考基準と応募要件
本アワードが対象とするのは、研究者としてのキャリアが始まる直前・直後の時期です。応募要件も、博士課程に在学中の学生と、学位を取得して間もない研究者に絞られています。
学術的に高い可能性をもつ博士論文を執筆した、博士課程在学中の学生または最近博士号を取得した研究者であること
博士論文が応募者本人のオリジナルの研究であること
博士論文の審査(ディフェンス)を終えていること
応募の際には、以下の書類を提出します。
博士論文の英語によるエグゼクティブサマリー(3,000語程度)
指導教員による推薦状
博士論文に関連する発表論文の一覧を含むCV(英文の履歴書)
博士論文の電子データ
博士号学位記のスキャンデータ(または、学位審査を控えた博士課程在学中であることを示す在学証明書)
選考基準と応募要件はジャーナルによって異なります。詳細はBest PhD Thesis Awardのページ、または各ジャーナルのサイトをご覧ください。
Young Investigator Award(若手研究者賞)
博士号を取得した後の段階を対象にしているのが、Young Investigator Awardです。
キャリア初期に優れた研究成果を上げ、専門分野の発展に貢献した研究者を表彰します。
選考基準と応募要件
対象は、キャリアの初期にある研究者に限られます。
ちなみに、ここでいう「初期」とは、推薦の時点で博士号取得から10年以内であることを指します。アワード名にある「Young(若手)」は実年齢ではなく、博士号を取得してからの年数を基準にしたものです。
選考基準は次のとおりです。
推薦の時点で博士号取得から10年以内であること
画期的な研究成果を上げ、専門分野の発展に大きく貢献していること
シニア研究者からの推薦を受けていること
推薦を行うのはシニア研究者です。分野の事情をよく知る研究者の判断を経て候補が挙がる仕組みになっています。推薦にあたっては、以下の書類が必要です。
最新の論文リストと、本人が獲得した研究助成の一覧を含む詳細なCV(英文の履歴書)
被推薦者の博士号学位記のスキャンデータ
実績のあるシニア研究者2名による署名入りの推薦状
提出された推薦は、各ジャーナルのAwards Evaluation Committee(選考委員会)が審査します。
選考基準と応募要件はジャーナルによって異なります。詳細はYoung Investigator Awardのページ、または各ジャーナルのサイトをご覧ください。
Travel Award(トラベルアワード)
MDPI Travel Awardは、研究者が自分で選んだ学術会議で最新の研究成果を発表できるように設けられたアワードです。
研究を進め、成果を世に出していくうえで、対面での交流は今も大きな役割を果たしています。学会では、経験を積んだ研究者と直接話す機会が得られるほか、自分の研究へのフィードバックを受けたり、同じ分野の研究者と成果を共有したりすることができます。
Travel Awardは、旅費や開催地との距離といった、若手研究者が学会に参加しにくくなる要因を軽くすることを目的としています。
選考基準と応募要件
応募できるのは、キャリアを歩み始めた段階の研究者です。
主な要件は次のとおりです。
ポスドク研究員または博士課程の学生であること
翌年に国際会議への参加を予定していること
応募の際には、以下の書類を提出します。
参加予定の学術会議の情報と、提出予定のアブストラクト
CV(英文の履歴書)および論文リスト
研究の焦点を説明する応募理由書
指導教員・研究責任者・学科長などによる推薦状(応募者の身分を証明するものを兼ねます)
選考基準と応募要件はジャーナルによって異なります。詳細はTravel Awardのページ、または各ジャーナルのサイトをご覧ください。
受賞者への特典
キャリアを歩み始めた研究者にとって、評価を受けることや、他の研究者とつながるきっかけが得られることには大きな意味があります。加えて、MDPIのアワードには具体的な副賞もあります。
本記事で紹介したアワードの副賞には、一般に次のようなものが含まれます。
賞金(多くの場合500〜800スイスフラン)
賞状
APC(論文掲載料)の免除または割引
Travel Awardの賞金は、旅費の負担を軽くし、費用の面であきらめていた学会への参加を可能にすることを目的としています。
APCの免除は、世界中の誰もが無料で読めるプラットフォームを通じて研究を発信し続けてもらうための支援です。オープンアクセスで公開すると、論文が読まれる機会が増え、引用にもつながりやすくなります。分野のなかで名前を知られていきたい時期の研究者にとっては、特に意味をもつかもしれません。
副賞の内容や条件を決めるのは各ジャーナルです。そのため、賞金額が高いジャーナルもあれば、表彰の件数が多いジャーナルもあります。
各アワードの詳しい条件は、ジャーナルごとのアワードページに掲載されています。ジャーナルのトップページからアクセスできます。MDPIのオープンアクセスジャーナルの一覧はこちら。
アワードを通じた若手研究者の支援
これからの科学を担うのは、いま研究者としての一歩を踏み出している人たちです。その成果を表彰し、活動を後押しすることは、オープンサイエンスを進め、学術交流の場を広げるというMDPIの取り組みの一部でもあります。
2025年だけでも、MDPIのジャーナルアワード全体の賞金総額は120万スイスフランを超えました。
ジャーナルごとのアワードやフラッグシップアワード(MDPI全体で実施している大型の表彰)については、別記事「MDPIアワードのご紹介~研究者支援制度」で詳しくご紹介しています。

