研究者のための実務ガイド⑥初めて査読を依頼されたらどうするか
- 4月14日
- 読了時間: 3分

査読依頼は、多くの研究者にとって突然届くものです。特に初めての場合、「引き受けてよいのか」「断ってよいのか」で迷う方も少なくありません。実際に、断ってしまうことに対して心理的な負担を感じる研究者は少なくありません。
本記事では、査読依頼を受けた際の「引き受けるかどうかの判断」と、「引き受けた後の対応」の基本を整理します。
なぜ自分に査読依頼が来るのか
査読依頼はランダムに送られているわけではありません。編集部は、著者論文や研究分野、これまでの業績などをもとに候補者を選定しています。
ただし、完全に同一分野の専門家に限られるわけではなく、近接領域の研究者に依頼されることもあります。また、経験の浅い研究者にも査読依頼が届くことは珍しくありません。自分にはまだ早いのではないかと感じる場合でも、依頼自体は特別なことではありません。
判断フェーズ:引き受けるかどうか
査読依頼を受けたら、まずは引き受けるかどうかを判断します。その際に確認すべき基本的な観点があります。論文のテーマが自分の専門や関心領域に十分近いか、提示された期限内で対応できるか、著者との関係性などにおいて利益相反がないかという点です。
すべてを完全に理解できる必要はありませんが、論文の妥当性を評価できるだけの知識があるかどうかは重要です。そして実務的には、時間を確保できるかどうかが最も現実的な判断材料になります。
ここで強調しておきたいのは、査読は義務ではないという点です。専門外であれば断ることは適切な判断ですし、時間が取れない場合に無理に引き受ける必要もありません。期限についても、事情があれば延長の相談は可能です。丁寧に返信すれば、これらの対応が問題になることは通常ありません。
また、査読は基本的に無償で行われることが多い活動ですが、出版社やジャーナルによってはインセンティブが用意されている場合もあります。例えばMDPIでは、査読完了後にバウチャーが発行され、自身の論文投稿時に論文掲載料(APC)の割引として利用することができます。
実務フェーズ:引き受けた後に何をするか
引き受けると決めた場合には、査読としての基本的な進め方を押さえておくとスムーズです。
まず重要なのは、査読は単なる評価ではなく、論文の改善に貢献する行為であるという視点です。良し悪しを判断するだけでなく、どこをどう改善すればよいかを示すことが求められます。
コメントを書く際には、感想ではなく理由と根拠を伴った指摘を行います。著者が理解できる形で伝えることを意識し、表現にも配慮します。
構成としては、最初に論文全体に対する評価を簡潔に示し、その後に研究設計やデータ、解釈などに関する主要な指摘を整理します。最後に、表現や誤記といった軽微な修正点を補足します。全体として、建設的なトーンを保つことが重要です。
感情的または攻撃的なコメント、根拠のない否定、自分の研究を引用させるための誘導、査読内容の外部共有などは適切ではありません。また、査読には守秘義務が伴うことも忘れてはなりません。
まとめ
査読依頼は、すべて引き受ける必要はありません。専門性や時間の状況を踏まえて判断し、断る、延長する、引き受けるといった選択を適切に行うことが重要です。
無理のない範囲で関わり続けることが、査読経験を自分の研究に還元することにつながります。査読への関わり方は、自分の研究姿勢を形づくる一部でもあります。


